2013年4月10日水曜日

恋愛実行委員会(3)

紀和と梨順は、二人して大きな模造紙に線や字を書くことになった。

「どうしよう…床に模造紙をじかに置いたら、マジック、映っちゃうかぁ」

紀和が、無意識につぶやくと、

「あ、じゃ、チョ(私)が教室に新聞紙、置いてあるから、それ、持ってくる!」
さっと聞き止めて、梨順はパタパタと廊下を小走りに去っていく。

しばらくして、よほど急いだのか、桃色の頬をよけいに濃くして、梨順が帰ってきた。
「はい、これだけあれば、足りるかな?」

「わあ…!」

紀和は、その紙をひと目見るなり、歓声をあげた。

幾何学模様のようなハングルが、小さな活字でぎっしりと規則正しく並んでいる。

英字新聞なら、包装紙の柄や、実際の切れ端で何度か見たことがあった。
でも、こんな新聞を見るのは、初めて。

「すごい…綺麗ねえ。私、ハングルの新聞、初めて見た!…読めないけどね、えへへ」
紀和は、頭をかいた。

「日本(イルボン)にも、チョの国の人、いっぱいいるよ。だからね、ハングルの新聞、買って読むの」

「えー、じゃ、梨順さんって、ハングルができて、日本語できて、学校で英語も勉強してて…三つも言葉しゃべれるんだ、すごーい!」

「やだ、恥ずかしい、そんな大きな声出さないで。あ、あと、『さん』つけなくていいよ、名前。梨順でいいよ、チョも『紀和』って、呼んでいい?」

「うん、もちろん。…でもほんと、この新聞、綺麗だなー。マジックの跡つけるの、もったいないね」

「大丈夫。家に、たくさんあるから」

二人は、いつの間にか仕事そっちのけで、おしゃべりに夢中になっていた。

(つづく)

★おまけ★
 ニュースではいろいろ言っている昨今ですが、うちのブログの中は、こんなスタンスです。はい、ガールズラブ至上主義。