2012年3月27日火曜日

卒業の日。

桜にはまだ早くて、青空の下はパンジーが強い風に吹かれて、けんめいに咲いている。
下級生の二列に並んだ送り出しを抜ければ、あとはもう三年生とは呼ばれない集団…「卒業生」たちが三々五々集まって、写真を取り合ったり機種を変えた携帯に赤外線でデータを送り合っている。

そんな時、裏庭の桜の木の下にぽつん、と二人の人影。
一人は紺色の指定コート、もう一人は白い長めのカーディガンを羽織っているが、その下はコバルトブルーのセーラー服に、赤いスカーフがふんわりと。

「…なんかさ、実感わかないよね」
「うん…」

立ち姿そのままに、二人はぽつんぽつん、と話す。
その会話が、雨だれのように、互いの心に染みわたっていく。

「美久里は、いつ実家を出発するの?」
紺色のコートが、口火を切る。
「うん…平日の方が、運送屋さん安いって言うから、今度の木曜あたり…。要は?」
美久里と呼ばれた白カーデの少女が、聞き返す。
「あたしは、おかーさんの仕事の都合で、次の火曜に行く予定」
「…はやい、んだ…」
美久里がしょんぼり言うのを、要は制するように
「そっ。だから、見送りに来てね。あたしんちの前まで」

「え…やだ」
「な、何でよ?!」
「だって…寂しいじゃない…?」
「そーんな、一生会えないわけじゃないのよ?メールも電話もあるし。考えすぎだってば」

「もう、毎日、手、つなげないし…一緒に学校、通えないもん…」
「それは、だからー、違う大学をお互い選んだんだから。…それに、時々、会えれば…手も、つなげるよ?」
要は、語尾をちょっと恥ずかしそうに小声にしながら、説得を続けた。

「…ね、要」
「ん?」
「お互いアパートに住んだら、連休とか、今までみたいに自宅で遠慮しなくて、お泊まりとか、できるよね?」
美久里のいきなりな大胆発言に、さすがの要もうっとくる。
心臓わしづかみ、ってやつだ。

「…で、できるだろうね、まあ…」
急に要の方が、しどろもどろな口調になってきた。
「…じゃ、高校卒業して、離れても、我慢、する」
健気に、自分に言い聞かせるように話す美久里が可愛らしくて、要はキスしたくなってしまった。

「ね。美久里」
「…キス、していい? 今」
「だめ…」
「どして? あたし、今、すごくあんたにキスしたい。触れたいの」

「それは、大学に入ってから、初めて二人で会ったときまで、取っておきたいの」
「…疑ってる? あたしのこと」
「違うの」
美久里は、肩にかかるストレートヘアをさらさらふるふると横に動かしながら、要を見て言った。

「きっと、私、知らない場所で、知らない人ばかりで、知らないお店で物を買って食べて、…慣れるまで、そういうのすごい不安だと思うの。でも、要とのその約束があれば、その約束を頼りにして、何とか一人でやっていけるって、そう、思うから」
おとなしいなりに、美久里も新生活を考えてるんだなぁ、と、要は聞いていて思った。

「わーかった。でも、ほんとに約束だよ、忘れないでね?」
要が念を押すと
「忘れるわけ、ないじゃない…私の、一人暮らしのお守りだもの」
美久里は、ほのかににっこり、した。
きっと桜が咲き始めたら、こんな色だろうなあ、と要が思わず見とれるほどの、淡い淡い桜色だった。

2012年3月26日月曜日

私のはるのうた(4月編)

ちょっと予告より早いんですが、お手本にしているブログに出ていたので、急遽。

私の好きな4月の歌、しかも4月1日限定! の歌は
松田聖子さんの「チェリーブロッサム」です。

イントロと「何もかも 目覚めてく 新しい私」

…もう、これ聞いただけで「うおおおお、新年度だわああああ」
って思ってしまう私は、やっぱアホっぽいですね(笑)

でも、この唐突な明るさ、よくわからないけど期待に胸が弾んじゃう、感じは
桜の花が咲く新年度にとってもよく似合う曲だと思います。

あと「つばめが飛ぶ 青い空は 未来の夢 キャンバスね
自由な線 自由な色 描いていく 二人で」という歌詞も好き。

自由な未来を夢見ることができるのも、春の特権だと思うので。

実はこれ、アイドルが歌ってるラブソングなんですよね。
でも、この曲はそんなカテゴリーを越えて「春」そのものを歌ってしまっている、そんなすごさも内に秘めている…そんな気がして、とても好きな歌なのです。

2012年3月23日金曜日

仕事の後の百合姫

仕事の後のお楽しみに、今日届いた
「コミック百合姫5月号」をパラ見しました。
やっぱ、表紙がいいわ。
女を手玉に取る女、ってかっこよくて、ドキドキする。

そういうキャラ、書いたことないけど、どうやったら書けるのかなぁ。
奪い合いとか、経験してないわけじゃないけど、文章にするのって難しい。
どっちかというと、笑いネタにもってっちゃう方だからなー、私。

百合とコメディを両立させたお話が書きたい。

別件。ひとりごと。
今週末は家族の用事で、ちょっくら帰省してきます。
彼岸の墓参りに行く間もなく、とんぼ返りの用足しですが。
親不孝だぜ、我ながら、ちっ。
本当は、桜が満開になる頃の命日には墓参りしたいもんだがね…

あ、墓参りと百合の話とか、作れないかな…(仏罰が下るぞ、俺)

2012年3月21日水曜日

私のはるのうた(3月編)

今回は百合っ気が全然ないテーマです。悪しからず。
例によって、仕事の逃避です(苦笑)

春でも、3月と4月ではニュアンスが全く異なってきますね。
やはり「別れと出会い」という二大イベントのためでしょうか。

今日は、私が独断で「3月、お別れの曲といえばこれ!」というのを一つ、ご紹介。
それは
my little loverの「Hello Again ~昔からある場所~」です。

今の時期になると、車でこの曲を聴き続けたいために、遠回りして帰るくらい好きな曲。
小林武史の楽曲にはそもそも弱いのですが(笑)とりわけこの曲は好き。

恋と自覚しかけた相手と、(あえて?)自覚しないまま別れて、後で気づいた自分。
「記憶の中で ずっと二人は 生きてゆける」という言葉にすがって別れたままのような、二人。

そんなあどけなさとはかなさも、春の別れらしいのですが、
私の一番好きなフレーズは、二番の冒頭です。

「自分の限界が どこまでかを知るために 僕は 生きてるわけじゃない」
この言葉が、大人になって聞くと改めて、ずーんと来ます。

で、その後に新しい世界へ歩んでゆく「僕」の姿が描かれ、救われるのですが、
やっぱり「記憶の中で ずっと二人は 生きてゆける」ままで、曲は終わってしまうのです。

もしかしたら、そういう記憶というのは、誰でも心の中に大切にしまってあるのかもしれません。
宝箱のように。
え、私ですか? うふふ…(誰ですか、いま気持ち悪いって言ったの~)

4月に入ったら、がらっと変わった気に入りの一曲を紹介しますね。
それでは、また。

2012年3月20日火曜日

AKB48の「ぷっちょ」見ましたかっ!!

今日も休日返上で、でろでろに働いています。
百合姫の新刊は、買いに行く暇がないので、さっきアマゾンで注文しました。
それを楽しみに生きていくわ、私。

そんな私の前に、驚きびっくりトキメキCMが~!!
それが、タイトルに書いた一件、いや、もうこれは事件。

横一列に並んだメンバーが一粒のぷっちょを、向き合いながら口移ししていくのですよ!!
中には、
「これは口移しでなくって、もろ触れてるだろ」的な二人もいたりして、もうお母さん(私)は大変です!

男の子だったら
「俺、ぷっちょになりてぇ~」って、思うのかな。

私は女なので(しかも百合好き)
「あんたら、何時間でもそれやってなさい! んで、ガンガン失敗するがいいわ!」
って思って見てました。

すいません、煩悩まるわかりです…。

しかしこのCM、JAROとかに連絡されないだろうか…いやマジで。
マリコさまの『この、ぷっちょ野郎』って台詞も、かなりイケてましたけど。
どこまでいくんだ、ぷっちょ。

その昔、宴会でオヤジと若い子がポッキーくわえて輪ゴム運びやるゲームあったけど、あんなの甘いな、今となっては。(懐かしいが)

余裕ができるかどうかわかりませんが、もしもできたら短編をアップしたいです。
3月から4月のこの時期って、そんな気分になるものだから。
それでは、また。

2012年3月7日水曜日

my favorite question

仕事でブログにお話が書けません~!!
なので、いま休憩中に読んでいる外国の女優さんの本をまねして、ちょっと遊んでみます。
質問項目は同じ、答えは…私のことだから、かなりレベル下がるよ。

・好きな色 ピンク
・好きな花 牡丹、チューリップ
・好きな遊び タロット占い、雑文書き
・好きな時間 夜
・好きな季節 夏
・好きなアルファベット Q
・好きな音 夜汽車と踏切
・好きな場所 自家用車の中、ひとり
・好きな果物 桃
・好きな野菜 トマト
・好きな画家 ミュシャ、杉浦非水
・好きな哲学者 うーん…ソクラテス?
・好きな詩人 堀口大学 若山牧水(歌人か)
・好きな動物 日本犬、ことに柴犬!
・好きな鳥 カワセミ、カモ
・好きな魚 ネオンテトラ
・好きな虫 かいこ
・好きな楽器 ピアノ、サキソフォーン

なんだ、
私って結構、好きなものあるのね。
ちょっと元気がでました。

仕事の残りは、また早朝に。
それでは、また。

2012年3月4日日曜日

最近、このブログでサービス不足を感じる私。

せっかく18禁で来ていただいてるのに、色っぽいお話が全然ないー。
先日、友人たちが泊まりに来てくれたんですが、アンチエイジングの話と家の愚痴だもんよ(苦笑)
そういうお年頃なんでしょうかねえ。

でも、私には個人的に(おおっ!)春めいた気分が少しずつ訪れています。

例えば、思ったよりも早くレスをいただいたコメントを読む瞬間。
例えば、意外によい香りを身にまとっている殿方と、すれ違ったとき。
例えば、偶然入ったコンビニで、すっごい背のでかい夜間工事のお兄ちゃんを見たとき。
例えば、普段は無愛想な同僚が、荷物一杯持った私のためにさりげなくドアを開けてくれたとき。

なによ~、わたしってささやかに幸せじゃん(現金)

そして今一番の楽しみは、思い通りの夢が見られることです。
これって、今までの人生でも何回かありましたが、割と春先に多いの。
いやー、寝るのが楽しみで、仕事もがんばっちゃいますよ。

…でもね。
百合じゃないの、その夢。
男の人同士なの~~(泣)
初めはプラトニックだったはずなのに、だんだんエスカレートしていく感じでこわい。

私、どこへいくんでしょうか…とほほほ。
それでは、また。