2011年6月26日日曜日

続・双子ぢゃなくってよ。(其の壱)

初夏の校庭に、ありすには珍しく、乙女子たちの大きな声が響いている。
「赤組ー、お振るいあそばせー!」
「白組ー、おしっかりー!」
跳び上がったり、手を叩いたり、夢中になってグランドを皆が見つめている。

今日は、全校を二つに割っての大運動会。
いつもの袴姿に組別のたすきをきりりとかけて、種目ごとに学年別の選手が数名選ばれ、活躍する。
ありすは、私立には珍しく、編出入の受験を希望する生徒も少なくないため、夏の初めに運動会を開くのだ。

さて、我らが主人公、一年生の御堂 珠子(みどう たまこ)さん。
小柄な体を生かしてなかなかのはしっこさ、リレーでも玉入れの跳躍でも、機敏に体を操って、属する赤組の勝利に少なからず貢献しているご様子。
ただでさえ、三年の「藤組の君」こと、甘露寺 絹江(かんろじ きぬえ)さんとエスのおん仲も睦まじく、うらやましがられたり、そねまれたりと、珠子さんは一年ながらかなりの有名人。
そこへこの活躍とくれば、やはりありすの女生徒からは、いろいろな意味で所謂「マーク」される存在。
ラフプレイもかけられれば、声援の声もひときわ高く、運動会を盛り上げる一人となっていた。

さて、お相手の絹江さん。
数日前から微熱が出て、白組の天幕の中、今年はもっぱら見学と応援。
(直接競わずにすんで、かえって良かったかも…。でも絹江お姉様、お体に無理なければよいのだけど)
時折、ちら、と相手方の天幕を覗いては、お姉様の具合を案じる珠子さんである。

2011年6月19日日曜日

バラ園にて(超ショートです!)

春と秋の二回だけ、私と香澄とは学校帰りに遠回りをするのが、暗黙の了解となっていた。
行き先は、駅と自宅の間にひっそりとある、バラ園。

「今年、咲くの遅い気がする~」
「あたし達が来るのが、早かったりしてね?」
くすくす笑いながら、蔓バラのアーチをくぐったり、大輪の品種で作られた小迷宮をめぐったりして、帰る。
うす暗くなってゆく中、香りが少しずつ湿った空気の中へ溶け出すように、濃くなっていくこの時が好き。
香澄と、二人で歩いていても、バラ達が隠してくれるのも、好き。

「ねえ杏奈、バラのおまじない知ってる?」
やにわに、前を歩いていた香澄が振り返って尋ねてきた。
「え?おまじない…?」
とっさに返事も思いつかず、おうむ返しの私に
「その年、一番気に入った色のバラの花びらを唇に挟んで、瞳を閉じてお願いするとね、恋が叶うって」
「うっそ」
「あたし、やってみよーっと。この前、スマホで見たんだもの。うーん、どれにしようかなぁ…」
とまどう私におかまいなく、そぞろ歩きで香澄はバラの花の物色を始める。

言われると、自分も、何だかやってみたくなった。
(香澄に内緒でお願い、すればいいもんね…)
今年は、黄色から濃いピンクへグラデーションしていく花弁のバラが、目立つ気がする。
迷わず、外側のきれいな一片をそっとちぎると、唇に挟んだ。
(神様、どうか香澄と、何時までも今のように一緒にいられますように…)

そのとき。
花びらじゃないものが、私の唇に、かすかに触れた。
もっと柔らかくて、甘くて、懐かしい、そんな何かが。

えっ、と思って瞳を開くと、すぐ前に悪戯っぽく香澄の顔が微笑んでいた。
「うっふふ、杏奈って、すぐ人の言うこと信じちゃうんだから。可愛い!」
「ちょ、ちょっとじゃあ香澄、さっきのおまじないの話、嘘だったの?!」
慌てて私が聞き返す。
煉瓦色の小路、二人の間に、さっきまでくわえていた花びらが、ひらりと落ちる。

「嘘じゃない。本当よ。だって、たった今かなったでしょう?違う?」
そうささやくと、もう一度香澄は、悪戯っぽく微笑んだ。

(おわり)

2011年6月6日月曜日

コミケ初参加です。ドキドキ!

他ジャンルでは何度も落ちてきたのですが(笑)
百合は一発当選、やはり旬のジャンルなのでしょうか。

…ともあれ、三日目の西ホールに行かせていただけることになりました。
仕事しながらですが、印刷屋さんの情報を更新したり、書き下ろしをちょっとためたり、
このブログを紙にしただけにならないよう、努めたいと思います。

おっと、それから、もうちょっと大人系の続編とかも書きたいです!
(夢を見るのは自由ですから?)

しかし、日本が年に一、二をあらそう混雑期間ですから、さっそく宿を取ってしまいました(笑)
喜んでるなぁ、自分。
でも無理しないようにしたいと思います。
…お客さん来なくても、お祭りに参加できるのは嬉しいから、まずは健康で。