2011年2月28日月曜日

か・み・な・り。(6・終)

梨奈に攻められて、カラオケ並みの大音量で、猫のような声をあげている自分が、実果は恥ずかしかった。
と、とたんに。

ふっ。

周りの全ての物も音も、消えてしまった。
あおむけに寝ながら、ゆっくりゆっくりと下りている自分がいる。
むせかえるような、甘いにおい。
見なくても、分かる。
自分の下には、とてつもなく大きな白牡丹の花が咲いていて、実果は、あおむけのまま、そこへ沈み込むようにふんわりと横たわった。
自分の体重の分だけ、花びらがふやん、と重みを持って下がり、またゆっくり上がってきてくれた。
天から、ゆうるりゆるりと花びらが何枚も舞い降りて、掛け布団のように実果をそっと覆ってくれている。

(なぁんて、気持ちがいいんだろう…。
 私、どうかなりすぎで、死んじゃって天国へ来ちゃったのかなぁ…)

「み・か・ちゃん☆」
そこへ梨奈の声が急に聞こえてきて、はっと実果は我に返った。
目の前の梨奈は、やけにニコニコしている。
「嬉しいな…、実果ちゃん、梨奈が頑張ったから、イッちゃったのね?」
はい?!
「急に気を失っちゃったから、びっくりしたけど、とっても気持ちよさそうな顔してたから、よかった~って」
そ、そうか…言われてみれば、話で聞いたり本でチラ見したことあったけど、あれが、アレの感覚かぁ…と言われれば、そんな気もしないでもない実果だった。

(しっかし、私って、感じやすいんだなぁ…。いよっし、今度はお返しだわ!)
「じゃ、今度は梨奈ちゃんね~?さっきは涙ぐんでたりして、私の方こそ、容赦しないんだから!」
「きゃんっ、実果ちゃんたらっ★ …でもね、時計、ほら…」
「げっ、もうこんな時間??!! でっでも、延長っていう手があるじゃない」
「梨奈、そんなにお金、もってないしぃ…」
「うーんと、でもっ、今度こーゆートコ、いつ来られるかわからないでしょう?…それに、私も、されてばっかりじゃなくって、梨奈ちゃんのこと、イカせちゃってみたい、し…」
「やーん、実果ちゃんったら、エロ可愛いっ」
「さ、話は時間があったら後でっ。まず、お互いの財布の中身を総動員よっ!」
「うんっ!」

時間があるのに、お金がないのが学生のつらい所と申しますが、さてこのふたり、この後どうなる?
この後は、ブログを離れて紙の上、個人で作る同人誌の上にて再び、お会いいたしましょうね★
                ~か・み・な・り。 終~

2011年2月26日土曜日

か・み・な・り。(5)

「やらかいね…」
ほうっとため息をつきながら、実果は梨奈の生まれたままの胸に触れる。
「…優しい、実果ちゃん」
梨奈も、ベッドに仰向けに寝そべる実果に覆い被さるような形で、ほうっとため息。

気がつくと、バスローブのひもが解けたわけだから、梨奈は何も着ていない前半分の姿をさらしてしまっていた。
「女の子らしくって、いいな…梨奈ちゃんは。ふんわりぽっちゃりしてて、憧れちゃうよ」
梨奈が気づいていないであろう、そのあられもないすがたに、じんわりと欲情しながら実果ガ言う。
「えっ、そんなことないもん。実果ちゃんの方が、細くって、スタイル良くって…ね、見ていい?」

こっちが見ちゃっている以上、今更ダメという理由もなく、それにちょっと、ちょっとだけ、梨奈になら見られたい…と言う気持ちも加わって、実果はこくりとうなずく。
シュッ、とローブのひもが解かれて、お互い、何もつけていない姿を見せ合った。
「ほらぁ、やっぱり綺麗!実果ちゃん…ちょっと、触らせて?」
さっきと一緒で、こっちが先に触っちゃってる以上プラス、梨奈に触られたらどうなるんだろう?というドキドキの好奇心もあって、実果は、またこっくん。
どーも、主導権は梨奈へいきそうな、いつもと違って奇妙な、でもそれでもいいかな?な、予感。

ぷりんっと、はじけさせるようにいきおい良く梨奈が胸を触ったので、その真ん中で紅く色づき始めている可愛らしい桜桃のような実にまで刺激がいってしまい、
「あ、や…んっ」
と、つい口をついて実果は喘いでしまった。
「わんっ、実果ちゃん可愛い声っ♪ 梨奈、いつもと違うその実果ちゃんの声、もっと聞きたいっ!」

梨奈は言いながら、手の全体や指先で、実果の両胸を可愛がる。
その度に、実果は普段では考えられないような甘え声を出して、のけぞるようにして愛撫をねだる。
「ん…っ、あっ、つよ…いっ」
「…じゃ、これは?気持ち、い?実果ちゃん?」
「あーっ、んっ、い…やんっ、すごい…だめぇ…ん」
「かわいい、実果ちゃん、感じやすいのね。すっごく、可愛くて大好き!」
「ね…私、私も…梨奈に、もっと、してあげたいよ…」
「うん…もうちょっと、してから、ね。梨奈、今、実果ちゃんの感じてるエロい姿みてたら、…あのね、…梨奈まで感じてきて、……ヌレてきちゃったん、だもん…」

おーい。
ヌレてるのは私も同じなのよーん。
だって、梨奈、もう手だけじゃなくって、唇や舌まで使って、私の胸とか、脇腹とか、耳の横とか、もういろんなトコを責め立ててきて、たまんないんだもん。

でも。
実果は、自分で自分に驚いていた。
梨奈が教えてくれなければ、こんな鼻にかかったようなねだり声を出しちゃうんだ、って。
それから、そうなっちゃうくらいエロ体質で、梨奈よりもたぶん、ずっとずっと感じやすい身体のもちぬしだったんだ、ってことに。

2011年2月21日月曜日

か・み・な・り。(4)

「お、おっまたせい~」
残っていた、ぶかぶか気味の水色のバスローブを着て、実果がシャワーから出てくると、急に梨奈がコホンコホコホ…と咳き込み始めて、止まらなくなった。
「ちょっ、大丈夫、梨奈ちゃん?!」
「う、うん…ちょっと、むせちゃって…へーき、コホン…」

見ると、テーブルにはほうじ茶(粉)を飲んだ跡。
(むむむ? じゃ、梨奈ちゃんも、さっき私がお茶を吹いたのと同じ…? い、いやいや。こんなだぶだぶの男物のバスローブ姿なんか…)
という、実果の推測は、はずれ。

ぶかぶかの男物一着をまとって出てきた姿は、ボーイッシュなはずの実果をかえって華奢に見せてくれちゃって、梨奈はキューンと来ちゃったのだった。
「実果ちゃん、可愛い…」
「はっ、はいいい?!」

な、なんと、押し倒してきたのはキュートな見た目の梨奈の方だった。
「梨奈ね、実果ちゃんとなら、こーゆー事、おんなのこ同士でしてもいいな、って、思ってた…の」
「わ…私となら、って、梨奈ちゃん、場慣れしてるっぽくみえるけど、まさか、他の…」
「いない」
「男の子とも?」
「いや。男の子って、怖そうで、梨奈、嫌い」
「かみなりも、男の子も嫌いなのに…私と、女同士でも、いいの…?」
最後の覚悟を問うように、乗りかかられながらも実果が訊くと、
「実果ちゃんしか、ダメなのっ。…梨奈ね、こーゆー事、実果ちゃんとしたいなって、何度も、思ったことある…」

その恥ずかしそうな告白と、「自分だけ」という想いが嬉しくて、実果はちょっとうずうずっとした。
そして、
「こーゆー事っ?!」
と言いながら、さっきからこっそりほどいていた梨奈のガウンのひもを解き、胸元をばっと開いてしまった。
「きゃんっ!」
「可愛いね、梨奈ちゃん」
ふんわりした、石鹸の香りのする胸に、そっと顔をうずめる。
上にいるせいだけでなく、梨奈の身体は着やせするらしくて、ぽっちゃりふんわりして可愛かった。
胸も、実果よりも豊かな感じ。
「…さわって、くれる?」
「…ん」
軽く頷くと、実果は下から、梨奈のまあるい胸をそっと、優しく手で触れ始めた。

2011年2月20日日曜日

か・み・な・り。(3)

1,2,3,go!

自動ドアの向こうはやたらに真っ暗で、目が慣れるまでに少し時間がかかった。
二人とも不安と好奇心で、ぎゅうっと繋いだ手に力が入る。

人気は、全然なかった。他のお客さんもいないみたい。
目が慣れてくると、入り口のすぐ横に、いろんな写真が四角くパッチワークみたいに並んだアクリルパネルが置いてあるのに気づいた。
ほのかな明かりがそこから出ているので、目が慣れたのだとわかった。

二人して、パネルににじりよっていく。
写真は、どうも部屋を撮したものらしかった。
らしい…というのは、そのパッチワークな四角の大半が暗くなっていて、よく見えないので。
「えーと、電気付いてる部屋が、1、2、3、4…20個四角あるうち、4つだけだよ? 実果ちゃん」
「てことはだな、うちらがお金払って使える空き室が、もう残り5分の1…って早っ!! こんな真っ昼間から、世間様はこんなトコに籠もってるってわけーっ?」

「ねー、ドコにしよっか、実果ちゃーん?」
面白みまんまんで、梨奈は残り4室の写真を見比べている。

世間の生臭さ(いや、自分もその一人だが)に少々ショックを受けてる実果は
「今度は、任す…。梨奈の好きなお部屋があったら、そこにして…」
と言いかけて、(ま、まった待ったああああ!)と、パネルへにじり寄る。
万が一、鎖とかムチとか革の服とか並んでる部屋とかあって、梨奈がそこのボタンをポチッとな★したら、それはいやだぞーーーっ!

しかし、実果の期待?空しくそんなお部屋はなくて、梨奈はピンクのふわふわりんダブルベッドのお部屋を選んだ所だった。
料金面がひときわ明るくなり、とりあえず万札をくずしたい実果が料金口に差し込むと、釣り銭と一緒に部屋番号を彫り込まれた、これまたアクリル製の「いかにも、ホテルのルームキー」な鍵が、パネル下の広い口から出てきた。

(あー、いよいよ私もラブホ経験者かー…)
しみじみ鍵を取る実果に顔を近づけ、梨奈が
「元気ない…? やっぱ、やだった?」
と、心配そうに尋ねてくる。
「う、ううん。どうして?」
「そんな風に、見えたから。梨奈はね、ホッとしたの。本当にここ、雷の音がしないんだもん。さっ、行こ!」
(…あ、あれ、確かここ、誘ったの私の方からじゃ…、ま、いいか)
心の中にちょっと「?」マークを残しつつ、梨奈が開けたエレベーターに実果も乗り込んだ。

ドアを開けると、思いの外「フツー」な部屋で、よかった。
窓が塗られて開かないのと、部屋一面がベッドなの以外は。
「風邪引かないように、梨奈ちゃん、シャワー先に浴びておいでよ」
「実果ちゃんは? 一緒に入らない?」
「いっっっっ、一緒ぉ?!とんでもない、お先にどうぞっっ。あんたの方がびびってた分、体も冷えてると思うしっ、かっっ、髪も長いからっ、濡れてるだろうし」
「…はーい」

おかしい。
この建物に入ってから、梨奈ペースになってる。
ま、まさか、あの子、初めてじゃないんじゃ…?
い、いやいや、そんなこと、嘘でも疑っちゃいけないのにっ、私のバカバカ。

実果は、一人でテンパっている心を静めようと、備え付けの電気ポットでお湯を沸かし、煎茶(粉)を飲んだ。
そこへだ。

「みーかちゃん、おっまったっせー☆」
乾かしたてで、ツインテールにしていない超ロングヘア姿の梨奈が、ピンクのパイル地ガウンで現れた。
ブーーーーッ!
…お約束通り、あまりの梨奈の可愛さに、飲みかけのお茶を吹いてしまった実果がいた。
「わーっ、大丈夫?本当に。なんかラブホ入ってから、実果ちゃん、心配~」
「だ、だいじょうびゅ。(←誤植じゃないです。笑)じゃ、じゃあ、今度はわたひが、シャワー浴びてくるからねーー!」
かけよってくる梨奈を振り払う勢いで、超特急でシャワーブースへ実果は走った。
 

2011年2月16日水曜日

か・み・な・り。(2)

駅近くの地下道出口から地上へ出ても、まだ雨はやんでいない。
このままだと、雷うんぬんのまえに、ふたりそろって風邪を引きかねない。

「ねえ、ネオンキラキラとか、自由の女神さんがたいまつ持ってるお人形とか、ないんだー」
「んなモン、こんな繁華街に堂々と建ってないっつの!」
「じゃあー、どこらへんのが、ん、と…ラブホ…?」
梨奈に聞かれて、まじまじと実果も繁華街から一歩入った道を行く。不安そうに手を伸ばした梨奈の掌を、ぎゅっと握りしめながら。
「カレシと行ったことがある、って友達が…確かこのへんに、二、三軒並んでて…って、…あれか?」
白や薄ピンク、薄水色の似たような細っちいビルが数軒並んでいる。で、そのどれもが入り口の所に4桁の料金プランが書いてあったり、目隠しの壁やシールドが張ってあったりして、いかにもそれっぽい。
「…ね、梨奈、どこにするっ?」
「ひいいん、まだゴロゴロ言ってるよぅ、もう、どこでもいいからぁ、実果ちゃんに任すぅ~」
任されちゃっても困っちゃったもんで、改めてじっくり吟味したいところだが、往来を行く人々の視線が、女子高生二人に刺さりまくってくるようで、どーも、イタい。
「決めたぁっ!」
実果は、心の中で(ここ重要、アンダーライン)叫んだ。

真ん中にしよう。
一番こぎれいだし、両側からプレッシャー受けてる分、料金かサービスか何かで、お得かもしれない。

と、いうことで。
前回(1)の冒頭部のごとく、1,2,3,go!になっちゃったわけである。

次回は、さーていよいよラブホ内部に突入してしまった二人の様子を描きますよ~ん♪

2011年2月15日火曜日

か・み・な・り。(1)

「行くよ、梨奈ちゃん。ちゃんと手つないでてっ!1,2,3,go!」
「えええっ、実果ちゃあん、ホントに入っちゃうのぉ?」
「アンタねー、誰のせいだとおもってんのよ!」
見るから~に女子高生の二人がきゃいのきゃいの騒いでいるのは、雷雨激しい都心のとある街。
の。
通称、ラブホ。正式名称、ラブホテルの真ん前である。

事の発端は、まあ、たわいもないこと。
休日に待ち合わせて、実果と梨奈の二人は、親友同士のお出かけ~というのは偽装で、本当はデート~に行くことになった。

嬉しくって、服にも気合いが入る。

黒いストレートヘアを肩にかからない程度にカットした実果は、毛先をちょっと内巻きにして、デニムのキャスケットをかぶる。
服装は、レディース仕様のライダースの下にフレンチカラーのボーダーのカットソー、ボトムは帽子とお揃いのデニムのスキニーパンツ、ハイカットのカラフルなスニーカー。
芸能人で言えば、テクノで人気のあの女の子3人アイドル、っぽい雰囲気。

一方、学校でもトレードマークのツインテールなやや栗色の髪型の梨奈は、パステルピンクのカーデの下に、白地に大きな赤いタータンチェックのリボンとフリルのカットソー。ボトムはレイヤードのこれまたタータンのミニスカートに、黒いニーハイを履いて絶対領域もばっちし、赤いスエードのくしゅくしゅブーツでまとめてる。
これはもう、あの巨大アイドル集団の一員になって投票されても、一部のマニアックなヲタ男子に熱狂的支持をうけそうな勢いのルックス。

そんな二人が、いつもより多いお小遣いを持って、新しいお洋服を買いに出たとき、事件は勃発した。
ピカッ。
ゴロゴロゴロゴロ。
天気予報にもなかった、突然の雷雨が空から街中を急に襲ってきた。
「きゃーん!!」
いきなり、実果の首っ玉に、梨奈が飛びついてきた。
「やんやんやだーん、梨奈、かみなりだいっきらいなのーっ!!」
可愛いルックスそのままに、梨奈は自分を名前呼びする。

「そらま、好きで踊り出しちゃうヤツって聞いたことがないけどさ…。じゃ、どこか避難しよっか?地下とか?」
「うんっ。梨奈、実果ちゃんの行くとこなら、どこでもいくーっ!」
この台詞が後々の複線になってしまうともしらず、逃げたい一心で梨奈はうなずいた。

しかしだ。
デパ地下に入ってみれば、同じように雨宿りの客で大入り満員。
「はいはいはい、嬢ちゃん方、やすいよやすいよーーーぃ!」
「ちょっと、そこの方、お並びでないなら、どいてくださる?ここの物産展、今日までなのよ」
あまりに雑然としすぎるその場の雰囲気に、二人はうんざり。
こういう所に限って、パーラーやカフェもないのだ。

「どこか、上に上がってファミレスかカフェでも入る?」
「いやだーん、それじゃ窓から雷、見えちゃうじゃなーいっ!」
そらそうだ。
目の前の可愛いヲタエサを、外の景色が見えないところで落ち着かせるにはどうしたらいいか…?

実果の頭に、ひとつ、場所が浮かんだ。
とても大胆だけど、とても行ってみたいところ。
今日の梨奈を一目見てから、密かに心の隅っこに思っていたこと。
(梨奈ちゃん、120パーヤバ可愛い…っ。男じゃない私でも、ちょっとどーにかしちゃいたい…っ)

もしかして、この雷雨は、天恵かも知れない。
聞き手をぎゅっとグーにして、実果は提案した、思い切って。
「梨奈ちゃん、とっておきの場所があるよ。窓が無くって、音も聞こえないトコ。」
「ええっ、そんな夢みたいなトコ、あるの!?」
夢みたい…じーんと、その言葉を反芻しながら、もう一つ、実果は決め台詞。
「梨奈ちゃん、私が行くトコなら、どこでも行く、って言ったよね?」
「うん。言ったわ。だって梨奈、実果ちゃんに嘘付いたことなんてないもん」

神様、じゃなくて雷様、ありがとう。
「じゃ、行くよ。地下道通るから、駅前まで戻るの我慢してね」
「いいよ。でも…ねえ実果ちゃん、これから行く夢みたいなトコって、どこ?」
「知りたい?」
黙って、コクンとうなずく梨奈。もーっ、可愛いっ。
「あのね。…ら・ぶ・ほ。」
「えええええーーーーっ!?」
「私も話で聞いただけだけど、中に入っちゃえば、昼間だか夜だかわかんなくなっちゃう位だって。雷なんかへっちゃらよ、きっと。さ、行こっ!」

話しながら、実果は自分の頬がぐんぐん熱くなっていくのに気づいた。
だから、早くごまかしたくて、梨奈の手をぐいっとつかむと、小走りに地下道を駅方面に走り始めた。

2011年2月13日日曜日

次作について。(運営者だより)

レトロな世界が好きなあまり、どーも今書いてるお話は長くなりそうです。

なので。
いったん仕切り直させていただきまして、次回からは、現代物をば。
でもって、20歳未満ご遠慮を張ってるならではのお話にしたいなと!
(って、ここの5行打ってる段階でタッチミス続出…おいおい、小胆だよ~)

女の子同士でラブホへ入っちゃう話を書いてみようと思います。
では、しばし待たれよ次回!
(って、いきなし明日からガンガン書いてるかも知れません。ネタが頭におりてくるまで、自分でもわからんわ。笑)

双子ぢゃなくってよ。(其の十弐)

それからのお二人は、周りの誰がごらんになってもおわかりなくらい、お仲良し同士。
日ごとにお花や小さな封筒が草履箱を行き交い、朝の登校時刻もお帰りも、ほとんどご一緒。
知らぬうちに、セルロイドの縞模様の筆入れがお揃いになっていたり。

藤組の君と噂されていた絹江さんには、それまで秘めた想いを抱く方も下級生に多く、
だからといって下の自分から言うのははしたない、と我慢していた所に、このお二人の睦まじさ。
心楽しきわけもなく。

「珠子さん、御堂珠子さんは、こちらのお組でしょう。」
「ええ、私がそうですが、御用向きはなんでしょう?」
他の組から出入り口に来た一年生、歩いてきた珠子さんの頬を、ぴしゃり。
クラスの皆は、えっと驚き、口々に騒ぎ立てる。

意外だったのは、皆がすぐに駆け寄り、珠子さんの味方につかなかったこと。
「何をなさるの!」「野蛮だわ、ありすの一員として恥をお知りなさいませよ!」

ひそひそ。
(恥をお知りになるべきなのは、どちらかしらね…)
(あれだけ、あけすけになさっちゃあ、見ている私たちだって、ねえ…)

打たれた頬を押さえながら、珠子さんはきっ、と相手をにらみ返す。
「お口をお持ちなら、御用向きはお口でお伝えなさるべきだと思うわ」
「…まあ、なんて、なんてお憎らしい! 藤組の君とあれもご一緒、これもご一緒。近頃は髪型まで、あなたの方がお揃え遊ばして、何様のおつもり?絹江お姉様と、双子かなにかとお勘違いなさってるの?!」
打った方の同級生が、目に涙を溜めながら、珠子さんにくってかかられた。
「違うわ!」
売り言葉に買い言葉の勢いで、珠子さんも大声を出していらした。
「双子なんかじゃないわ。だって、だって私達…」

その続きは、頭の中に浮かんでいたけれど、決して口に出してはいけない言葉、だった。

             ~第壱部・了~

2011年2月11日金曜日

双子ぢゃなくってよ。(其の十壱)

「絹江お姉様、すごくモダンでお素敵。お着物、よくお似合いでらっしゃる…」
二人並んで玉砂利を踏み踏み、正面玄関へ歩きながら、うっとりと珠子さんがつぶやく。
「アラ、珠子さんの方がお可愛い。袴をはかなくて、市松人形さんみたい」
にっこりと微笑んで、歩きやすいようにか、気を遣わせないようにか、そっと片手を取ってくださる。
そのすべすべした感触と長い指、紅珊瑚のように刻まれたお爪が、これまたお綺麗。

さっそく玄関から紹介されていった珠子さんとたけは、教えられた通りの口上を使用人の人々から、奥の間に控えられし絹江さんのお母様にまで申し上げれば、あとはご自由にお楽しみ遊ばせ、ということになった。
お口にうるさい珠子さんのお母様が誂えさせただけあって、差し上げた西洋菓子の折は殊の外お喜ばれ、さっそく「お持たせ」として、絹江さんのお部屋へいくらか、熱い紅茶と一緒に運ばれた。

「…あのう、たけは、今頃どこで…? 急にこのお部屋へ飛び込まれても、失礼なので」
おそるおそる珠子さんが尋ねると、クスクスと絹江さんが笑われて
「大丈夫よ、わたくしのところのきよが、たけさんを侍女部屋でおもてなししていますからね」
「ああ、よかったあ…」
素直にほっとする珠子さんに、絹江さんはまた笑われる。
「そんなに、あの人お苦手?」
「…では、ありません。でもなんて言うか、この頃…そう、絹江お姉様からお手紙をいただくかいただかないかの頃から、急に、いちいち指図されるのがうるさく聞こえるようになったというか…」
「…わたくしにも、あったかしらね。そんな時が」

「ええっ、お姉様みたいにお優しくてお素直な方でも?」
びっくりして声を荒げる珠子さんに、今度の絹江さんは、ちょっと気怠いような視線を投げて
「わたくし、そんなにお褒めいただけるような者ではありませんわ。だってね、…珠子さん、ちょっといらして?」
その声に、疑わず繻子の椅子から下りて、絹江さんの方へ珠子さんが近づいていくと、
「そら、つかまえた!」
見た目のたおやかさとは裏腹に、絹江さんは珠子さんを両手でひょい、と捕まえて、椅子にすわったままお膝の上で、珠子さんを横抱きにしてしまった。
「……!?」
その唐突さに、とっさに言葉も出ない珠子さん。
「紅の鹿の子の縮緬が、おかっぱさんに本当によく似合いますこと。今日、一目見たときから『まあ、なんてお可愛らしいわたくしのお人形さん! きっとこうやって抱っこして差し上げなくっちゃ』って、思っていましたのよ。」
ふんわりと、その物言いと同じように、絹江さんは珠子さんをお抱きのまま。
そうして、嫌なら逃げられるはずの珠子さんも、絹江お姉様にお人形抱きにされたまま。

いくらエスがおさかんなありすでも、こんなこと、できはしない。
だから、こんな夢みたいな時間を、二人とも壊したくはなかった。

絹江お姉様の柔らかな唇が、珠子さんの左頬に、そっと、当たる、
驚いてお姉様の顔を見つめようと、向き合う珠子さんの鼻の頭に、今度は唇が当てられて。
そうしたらもう、くらくらとしてしまって、お返事の仕方が分からなくなった珠子さんは、大胆にも絹江お姉様の両頬にそっと手を当てて、あどけなさを残したまま、自分の唇とお姉様の唇をそっと、合わせた。
「ま…、珠子さん、お可愛い。大好き、大好きよ…?」
そのまま何度か、小鳥が嘴をついばみあうように、二人は、閉じたままの唇を何度か重ねて、それから、額と額をコツン、と合わせた。

「珠子さんは、わたくしのこと、お好き…?」
「大好き。お姉様の事、好きすぎて、さっきから、胸の奥が痛いくらい…」
「マア、それはたいへん。たけさんをお呼びになる?」
「そしたら、もっと、痛くなります」
そこまで言うと、二人は緊張の糸を解き、互いにふふっと笑った。
「では、珠子さんのお持たせで恐れ入りますが、お茶にいたしましょうか?」
するり、と滑り台のように絹江お姉様のお膝から下りると、珠子さんも
「はい。そちらの方が、お薬よりずっと効きそうな気がいたします」
と返事をした。

2011年2月8日火曜日

ちょっとお茶タイム(百合系おしゃべり)

少々遅くなりましたが「再誕。」そして「聖戦。」とくれば…新生「コミック百合姫」ですね。
挑発的な装丁が、懐かしの『少女革命ウテナ』派の私にはそそります(笑)
白地の背表紙並べたい。うずうず。

1月号は、帳尻合わせの都合があったので、むちゃむちゃ過去の短編が多く
正直、ずっとこのままで行かれたら困るなー思ったのですが、
3月号は落ち着いてきた感じ。

コミックスの広告が、体裁を全部統一してるのが、かっこいいですね。
逆に、揃えられてしまう分、作家さん泣かせかもしれませんが。

いまのBLが、嫁に行ったり子供生んだりヘーキになっちゃったのを嘆く一人である私としては、
百合にこそ、残された「背徳感」をしょっていてもらいたい。

いや、ほのぼの百合や、ロリ系男性作家さんもいいですよ、いて。
(3月号の「百合男子」を読むまでもなく、百合好きの中では男子も貴重な担い手だし)

でも、「ヘーキ」じゃないからこその葛藤とか、恥じらいとか、だからこその快楽増幅効果(何のこっちゃ)とかがねー、同性愛のマンガや小説読みの醍醐味だと思うんですねー。

あと、体の問題には、言及しないわけにはいかないが、しかし生臭いリアルは不要かなあ。
女同士の場合、ここのさじ加減が一番難しいわけで。
あけすけになっちゃうとね、ロマンチックじゃないし。
でも、なんもないプラトニック一色だと「つまーんなーい」のが、わがまま百合好きでして。

だから、うちのブログも一応成人向けをかけてあるんですけどね。
(ブラフじゃなくて、そういうのも考えてますので、いちおう。でも、いま書いてるレトロ話が思いの外長くなっている~!ライバルとか出すなら、第一部とかにわけようかしらん?)

2011年2月5日土曜日

双子ぢゃなくってよ。(其の十)

さて、待ち焦がれた土曜日、帰宅してお昼を頂くのもそこそこに、珠子さんは夕べから支度してあった小豆色の麻の葉模様の縮緬に、錦の袋帯。鹿の子の帯揚げもふうわりとめかし込んで、絹江さんのお宅へお出かけ。
たけがその後から、いつものように小走りで、西洋の焼き菓子が詰まった風呂敷包みをおしいただき、それぞれの人力車へと乗り込む。
(人が人を走らせる人力なんて、本当は、わたし嫌い。いっそ馬車を御するか、一人駆けさせてみたいわ。
きっと小気味よいでしょうね…絹江お姉様の所にも、そうしたら何時だってゆけるのに)
そんな事を考えながら、いつもより気持ち窮屈な着心地で揺られているうち、甘露寺の邸宅へ到着した。

「まあ、おすごいお宅…」
はしたないと存じていても、つい、珠子さんは声を漏らした。
自宅の御堂家は、ご一新後に建てた、和洋折衷のこぢんまりした建物と、園丁に任せた花園。
でもこちらの甘露寺家は、ご門に弓矢の跡がまだのこっていそうな、しっかりした土塀に囲まれた大きな庭園が、鳳凰の翼を広げるように建てられた、日本家屋を包むように覆い込んでいる。

「たけとこなければ、迷子になるところだったわ」
「オヤ、お素直でらっしゃいますね。いえ、このたけも、昨夜こちらにお勤めのきよ様に、女学院でお会い遊ばしていなければ、とっくのとうに迷子になってございましょうよ」
門から正面玄関までは、玉砂利を踏んで歩く。毎日編み上げ靴を履いて通学するのに慣れた珠子さんには、草履に足袋がややじれったい。

すると、正面から
「ありがとう。おいで遊ばしたのね、嬉しいわ」
サクサクと玉砂利を踏む音も軽やかに、榛色の地に御所車の友禅をお召しになった絹江さんが、お迎えにいらした。
「わァ、絹江お姉様!」
突然にお姿を見られたことが嬉しくて、つい思ったままを口に出した珠子さんだが、すぐそばのたけがコホン、と咳払い。
「…本日は、お招き遊ばしまして、誠に恐悦至極に存じ上げます。御尊父様を御始め、ご家族の皆々様にもごきげんよう、存じ奉ります」
改めて、珠子さんは教えられたとおりの口上を述べなさる。

2011年2月2日水曜日

双子ぢゃなくってよ。(其の九)

お部屋の卓上に、小さな花瓶。
そこへ今朝頂いた三色すみれを生けて、ぼうっと珠子さんは見ている。

帰り、たまたま昇降口で絹江さんと行き会い、一緒に帰りましょうか、というお話になった。
「でも、わたし、侍女がいつも人力車に乗って、迎えに来るんですの。だから…」
珠子さんがそう話すと、絹江さんはちょっと残念そうな顔をなさった。が、すぐにパッと頬を輝かせて
「なら、今度の土曜日、学校が引けて一度お帰りになってから、私の家へ遊びにいらして? ね?」
と、話し出された。

「え、ええと、母に聞いてみませんと、何とも今は…」
「あら、そうね、珠子さんの名字は御堂さん。お家の方のお許しが無ければ、矢鱈にお外へは出られないお家柄のはずだわ。ごめんなさいね、お気安く誘ってしまって」
「そんな。絹江さんこそ、甘露寺といえばこの辺りで知らぬ者のない旧家のお嬢様でいらっしゃるはず…」
自分の家を自慢したかと誤解されるのが怖くて、あわてて珠子さんが話すと
「いいえ、家なぞ大したことなくってよ。だから、お気軽にお誘いできるのだわ。ね、お許しをもらってきて頂戴ね。きっとね」

いつの間にか、校門の所まで二人、話しながら歩いてきていた。塀の少し先には、たけの乗った人力車が見える。
(今日に限って、どうしてこうお迎えが早いのかしら…)
少しだけジレジレした心持ちになりながら、珠子さんは絹江さんと別れの挨拶を交わした。

珠子さんが人力へ向かいながらふっと見てみると、校門の辺りのあちこちで、同じように話し込んだりノートを手渡したりしている、上級生と下級生が何組も、あった。

(やっぱり、これって『エス』なんだわ…。わたしと絹江さんも、この方々と同じように見られている。そうして、まぎれもなく、同類なのね…)
少しずつ自覚が芽生えてくると、ちょっと大人びたような気がした珠子さんなのだった。

家へ帰って、紺地に紙風船柄の伊勢崎銘仙に着替え、珠子さんは土曜のお話をお母様へ切り出した。
すると、事の他すんなりとお許しを頂き、その上
「甘露寺様とおっしゃったら、お公家さんの血をひいていらしたお宅ではなかったかしら。手ぶらに普段着で、というわけにもいきませんわね。さっそく、たけに頼んで西洋菓子の折をみつくろってもらわないと。それから、珠子さんも。家にいるように銘仙やお召に三尺帯で、お邪魔するわけにはまいりませんわね。上方の伯母様から頂戴した友禅や縮緬がよろしいかしら、それとも洋装になさる…?」
とまあ、『遊びに行く』の範疇を越えた大仰な話になってしまい、
「なんだか、よくわからなくなっちゃったわ…たけとお母様のいいようになさって頂戴」
とだけ答えると、ふらふらと自室へ戻ってしまったのだった。

「ねえ、三色すみれさん。お綺麗だからみとれる、お優しいからお話する、お慕わしいからずっとずっと一緒の時間を過ごしてお遊びしたい。…そう単純には、物事、行かないものなのかしら?」
珠子さんは、小さな花瓶に生けられた、絹江さんからの三色すみれに話しかけていた。

三色すみれの花言葉は「物思ふ」「恋の想い」とも。
珠子さんは知らずとも、絹江さんはその花言葉を果たして渡した時に知りたりや、はたまた否や?

双子ぢゃなくってよ。(其の八)

「ねえ、珠子さん。もしお嫌でなかったら、こんなふうに時々、お花やお手紙をやりとりしてもよくって?」
ガーベラの花のような絹江さんの申し出に、珠子さんは、またこくん。

「あの、でも…わたし、どんなふうにしたらよいのか、わからなくって」
「アラ、今朝してくださったようで十分、嬉しくてよ。お手紙は無理なさらなくていいの。ホラ、学年がふたあつも違うと、同じありすにかよっていても、お顔を見たりお話をしたり、なかなかできないでしょう? だから、ね?」

にっこりなさる絹江さんは、珠子さんよりお背が二寸と少しくらい高くてらして、首をかしげると、ちょうど視線が合うので、珠子さんはどきどきしてしまう。髪も、二人とも断髪ではあるけれど、珠子さんはまだ小学校の延長のようなおかっぱさん。絹江さんは、少女雑誌に出てくるボッブヘアのように後ろをしゅっと短く刈っていらして、でもおっとりしたお顔だちのせいで校則違反にはあたらないような、どこか柔らかさがある内巻き気味の髪型。

「それから、お手紙やお花を下さる時は、誰にも見られないようになさってね」
「どうして?」
「他の方々も、皆、そうなさってるから。ね、御願い」

…これが、『エス』っていうものなのかしら。
さすがに珠子さんはそこまでは訊けず、磨き込まれた木の階段をトントンと軽やかに上がっていく絹江さんの後ろ姿に、ぽうっと見とれているだけだった。

「…あら?!」
気づいたら、珠子さんの手には可愛らしい三色スミレの花束が握られていた。
いつの間に。
なんておちゃめで、素敵な方なのかしら、絹江さんって。
手妻のようなその早業に、珠子さんはすっかり心を奪われてしまった。