2011年4月21日木曜日

ラブ様にお願い!(3)

(考えてみたら、私、いつから、みつき先生を好きになっていたんだろう…)
先生の薄明るい白衣の背中を見つめて歩きながら、朝香は思った。
確かに、さっき先生が自嘲気味に言った特徴は、ある。
でも、それ以上に、共学校でも男女隔てなく授業できっちり教えてくれるとか、
どうしたら生徒がもっと理解できるか、(たぶん今日も)授業研究に手を抜かないところとか、
嫁探し気分の独身男教師や、結婚相手探しめいたチャラチャラした女教師にはない素朴さとか、
…そんなところが好きなのだ。たぶん。いつの間にか。

「…あのう…」
「何?」
おずおずと朝香が問いかけると、黒髪と白衣の裾とをさらりとひるがえして、みつき先生が振り向く。
「…先生は、…どうして、こんなに遅くまで、あの、いらしたんですか?」
「おやおや、返り討ち?」
今度は、薄闇でもわかるくらいはっきりと、先生がクスリ、と笑った。
その身のこなしや表情はいつも見られない雰囲気で、朝香はドキン、とさせられる。
「私は手際が悪いからね。明日の実験準備をしているうち、こんな時間になったというわけ。…でも」
「…で、でも…?」
「同じように校舎に残ってるのがもう一人いるとは、気づかなかった。見つけられて良かったよ」
「……!」
最後のみつき先生の言葉が、身に余るほどの嬉しい響きに聞こえて、朝香は言葉が出なかった。

(これって、ラブ様…あなたのおかげ、なん、でしょうか…?)

2011年4月19日火曜日

ラブ様にお願い!(2)

(オカルト趣味のクラスメイトに習った魔法陣、まさか、ホントに効いたんじゃないよね…)
誰にも言えない想い人の後ろを、茶色の革鞄をかかえるようにして歩きながら、考える。
(どうして先生は、私が教室に一人でいるのがわかったんだろう?)
二人だけで廊下を歩く中、校庭から聞こえてくる部活のかけ声がこだまする。
「…何、してた?」
「ひえっ?!」
いきなり世界一答えられない質問をぶつけられて、朝香はすっとんきょうな声をあげた。
「怖く、なかったのか?」
「い、いいえ…」
「何をしてたか知らないが、よっぽど夢中になってたんだな?」
そう言いながら、先生の背中がちょっとだけ、クスリ、と揺れて見えた。
暗闇の中、見間違いかも知れないけれど。
「…そういえば、朝香さんは、珍しく私の事も怖がらないな。大抵の生徒は、不気味だの実験オタクだのと勝手にレッテルを貼って、授業の最低限以外は寄りつきもしないが」
(怖がるわけ、ないじゃないですか!!)
みつき先生にそう言いたかったが、やっぱり、心の中の何かが邪魔して、言えない。

あー、ラブ様、どうしたらいいんでしょうか?!

2011年4月18日月曜日

ラブ様にお願い!(1)

「ラブ様、ラブ様、おねがいします。片思いのあの人と結ばれっこないことはわかっています。それでもやっぱり、私のこの想いが通じますように、どうか、力をお貸し下さい…」
誰もいなくなった、夕闇迫る放課後の教室。野球部とサッカー部のナイター照明のおかげで、真っ暗にした室内でも、その声の主の姿はかろうじて見える。
グレーのブレザーに紅いネクタイ、おかっぱ姿で机の上に怪しげな陣をチョークで描き、一心不乱に祈っている。
そのとき。
「こら、誰だ!こんな遅くまで暗い中に残って!」
突然廊下側のドアがぴしゃりと開けられ、怒鳴られたとき、
「きゃあああああ!」
祈るどころではなく、その生徒~村木 朝香~は、思い切り叫んでしまった。
理由の一つめは、唐突さで。
そして、二つめは、まさにいま祈っていた片思いの相手が、自分にむかって怒鳴ったことに驚いて。
「日直の先生も、もう帰った。私も準備室から職員室へ戻ろうとしていたところだ。早く、荷物をまとめて。一人で玄関まで真っ暗な校舎を歩かせるわけにはいかない」
きびきびと話す言葉は男の教諭のようだが、白衣の上は薄化粧をした端正な顔立ちに、背中まで届きそうなストレートの黒髪。
そう、朝香の片思いの相手は、科学担当の女教師、堀江 みつきだったのだ。 

2011年4月12日火曜日

お久しぶりの百合。

この一ヶ月半、なに故に更新されていなかったかといえば、単純明快。
家のプロバイダが変えられて、機械ベタな私はネットにつなげなかったのでありますよ。

それから、年度替わりで仕事の内容もガラッと変わり、地震は今日もぼちぼち来るしと、
何だかあわただしい日々・・・のせいにも、しておりました。

「コミック百合姫」最新号はアマゾンで取りよせて読んだのですが、
いや、マンガのせいではないのですが、日常に埋もれすぎて、今はまだちょっと百合パワー不足。
あっ、決して自粛しているわけでは無いのです。
むしろ、萌えパワー出てる方が人間、元気だと思うので。

あまり深く設定を考えずに、日にちも不定期となりますが、
まずは百合で日本を元気にしよう(笑)という気持ちで、次回からショートストーリーを書いてみます。
ではでは、仕事へ戻りますので、今日はこれにてドロン。