(考えてみたら、私、いつから、みつき先生を好きになっていたんだろう…)
先生の薄明るい白衣の背中を見つめて歩きながら、朝香は思った。
確かに、さっき先生が自嘲気味に言った特徴は、ある。
でも、それ以上に、共学校でも男女隔てなく授業できっちり教えてくれるとか、
どうしたら生徒がもっと理解できるか、(たぶん今日も)授業研究に手を抜かないところとか、
嫁探し気分の独身男教師や、結婚相手探しめいたチャラチャラした女教師にはない素朴さとか、
…そんなところが好きなのだ。たぶん。いつの間にか。
「…あのう…」
「何?」
おずおずと朝香が問いかけると、黒髪と白衣の裾とをさらりとひるがえして、みつき先生が振り向く。
「…先生は、…どうして、こんなに遅くまで、あの、いらしたんですか?」
「おやおや、返り討ち?」
今度は、薄闇でもわかるくらいはっきりと、先生がクスリ、と笑った。
その身のこなしや表情はいつも見られない雰囲気で、朝香はドキン、とさせられる。
「私は手際が悪いからね。明日の実験準備をしているうち、こんな時間になったというわけ。…でも」
「…で、でも…?」
「同じように校舎に残ってるのがもう一人いるとは、気づかなかった。見つけられて良かったよ」
「……!」
最後のみつき先生の言葉が、身に余るほどの嬉しい響きに聞こえて、朝香は言葉が出なかった。
(これって、ラブ様…あなたのおかげ、なん、でしょうか…?)
2011年4月21日木曜日
2011年4月19日火曜日
ラブ様にお願い!(2)
(オカルト趣味のクラスメイトに習った魔法陣、まさか、ホントに効いたんじゃないよね…)
誰にも言えない想い人の後ろを、茶色の革鞄をかかえるようにして歩きながら、考える。
(どうして先生は、私が教室に一人でいるのがわかったんだろう?)
二人だけで廊下を歩く中、校庭から聞こえてくる部活のかけ声がこだまする。
「…何、してた?」
「ひえっ?!」
いきなり世界一答えられない質問をぶつけられて、朝香はすっとんきょうな声をあげた。
「怖く、なかったのか?」
「い、いいえ…」
「何をしてたか知らないが、よっぽど夢中になってたんだな?」
そう言いながら、先生の背中がちょっとだけ、クスリ、と揺れて見えた。
暗闇の中、見間違いかも知れないけれど。
「…そういえば、朝香さんは、珍しく私の事も怖がらないな。大抵の生徒は、不気味だの実験オタクだのと勝手にレッテルを貼って、授業の最低限以外は寄りつきもしないが」
(怖がるわけ、ないじゃないですか!!)
みつき先生にそう言いたかったが、やっぱり、心の中の何かが邪魔して、言えない。
あー、ラブ様、どうしたらいいんでしょうか?!
誰にも言えない想い人の後ろを、茶色の革鞄をかかえるようにして歩きながら、考える。
(どうして先生は、私が教室に一人でいるのがわかったんだろう?)
二人だけで廊下を歩く中、校庭から聞こえてくる部活のかけ声がこだまする。
「…何、してた?」
「ひえっ?!」
いきなり世界一答えられない質問をぶつけられて、朝香はすっとんきょうな声をあげた。
「怖く、なかったのか?」
「い、いいえ…」
「何をしてたか知らないが、よっぽど夢中になってたんだな?」
そう言いながら、先生の背中がちょっとだけ、クスリ、と揺れて見えた。
暗闇の中、見間違いかも知れないけれど。
「…そういえば、朝香さんは、珍しく私の事も怖がらないな。大抵の生徒は、不気味だの実験オタクだのと勝手にレッテルを貼って、授業の最低限以外は寄りつきもしないが」
(怖がるわけ、ないじゃないですか!!)
みつき先生にそう言いたかったが、やっぱり、心の中の何かが邪魔して、言えない。
あー、ラブ様、どうしたらいいんでしょうか?!
2011年4月18日月曜日
ラブ様にお願い!(1)
「ラブ様、ラブ様、おねがいします。片思いのあの人と結ばれっこないことはわかっています。それでもやっぱり、私のこの想いが通じますように、どうか、力をお貸し下さい…」
誰もいなくなった、夕闇迫る放課後の教室。野球部とサッカー部のナイター照明のおかげで、真っ暗にした室内でも、その声の主の姿はかろうじて見える。
グレーのブレザーに紅いネクタイ、おかっぱ姿で机の上に怪しげな陣をチョークで描き、一心不乱に祈っている。
そのとき。
「こら、誰だ!こんな遅くまで暗い中に残って!」
突然廊下側のドアがぴしゃりと開けられ、怒鳴られたとき、
「きゃあああああ!」
祈るどころではなく、その生徒~村木 朝香~は、思い切り叫んでしまった。
理由の一つめは、唐突さで。
そして、二つめは、まさにいま祈っていた片思いの相手が、自分にむかって怒鳴ったことに驚いて。
「日直の先生も、もう帰った。私も準備室から職員室へ戻ろうとしていたところだ。早く、荷物をまとめて。一人で玄関まで真っ暗な校舎を歩かせるわけにはいかない」
きびきびと話す言葉は男の教諭のようだが、白衣の上は薄化粧をした端正な顔立ちに、背中まで届きそうなストレートの黒髪。
そう、朝香の片思いの相手は、科学担当の女教師、堀江 みつきだったのだ。
誰もいなくなった、夕闇迫る放課後の教室。野球部とサッカー部のナイター照明のおかげで、真っ暗にした室内でも、その声の主の姿はかろうじて見える。
グレーのブレザーに紅いネクタイ、おかっぱ姿で机の上に怪しげな陣をチョークで描き、一心不乱に祈っている。
そのとき。
「こら、誰だ!こんな遅くまで暗い中に残って!」
突然廊下側のドアがぴしゃりと開けられ、怒鳴られたとき、
「きゃあああああ!」
祈るどころではなく、その生徒~村木 朝香~は、思い切り叫んでしまった。
理由の一つめは、唐突さで。
そして、二つめは、まさにいま祈っていた片思いの相手が、自分にむかって怒鳴ったことに驚いて。
「日直の先生も、もう帰った。私も準備室から職員室へ戻ろうとしていたところだ。早く、荷物をまとめて。一人で玄関まで真っ暗な校舎を歩かせるわけにはいかない」
きびきびと話す言葉は男の教諭のようだが、白衣の上は薄化粧をした端正な顔立ちに、背中まで届きそうなストレートの黒髪。
そう、朝香の片思いの相手は、科学担当の女教師、堀江 みつきだったのだ。
2011年4月12日火曜日
お久しぶりの百合。
この一ヶ月半、なに故に更新されていなかったかといえば、単純明快。
家のプロバイダが変えられて、機械ベタな私はネットにつなげなかったのでありますよ。
それから、年度替わりで仕事の内容もガラッと変わり、地震は今日もぼちぼち来るしと、
何だかあわただしい日々・・・のせいにも、しておりました。
「コミック百合姫」最新号はアマゾンで取りよせて読んだのですが、
いや、マンガのせいではないのですが、日常に埋もれすぎて、今はまだちょっと百合パワー不足。
あっ、決して自粛しているわけでは無いのです。
むしろ、萌えパワー出てる方が人間、元気だと思うので。
あまり深く設定を考えずに、日にちも不定期となりますが、
まずは百合で日本を元気にしよう(笑)という気持ちで、次回からショートストーリーを書いてみます。
ではでは、仕事へ戻りますので、今日はこれにてドロン。
家のプロバイダが変えられて、機械ベタな私はネットにつなげなかったのでありますよ。
それから、年度替わりで仕事の内容もガラッと変わり、地震は今日もぼちぼち来るしと、
何だかあわただしい日々・・・のせいにも、しておりました。
「コミック百合姫」最新号はアマゾンで取りよせて読んだのですが、
いや、マンガのせいではないのですが、日常に埋もれすぎて、今はまだちょっと百合パワー不足。
あっ、決して自粛しているわけでは無いのです。
むしろ、萌えパワー出てる方が人間、元気だと思うので。
あまり深く設定を考えずに、日にちも不定期となりますが、
まずは百合で日本を元気にしよう(笑)という気持ちで、次回からショートストーリーを書いてみます。
ではでは、仕事へ戻りますので、今日はこれにてドロン。
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