中学を出てから初めての同窓会は、15年ぶりの顔でいっぱいだった。
女子より背が低くて可愛がられていた最前列の男子が、ひげ面で見下ろしてきて驚いたり、恩師がみんなそろってタイムマシンに乗ってきたみたいに、全然年を取って見えないのが不思議だったり。
三十路に入って、既婚者組と未婚者組は、話題の違いもあって、何となく分かれて立ち話。
特に女子…いや、もう奥様チームと言うべきか…は、未婚の友人達や奥様仲間をちらりちらりと見ながら、静かに牽制し合っている。
(あの子、中学の時あんなに人気あったのに、まだ結婚相手いないのかしら…)
(もうちょっとやせてたと思ってたけど、あの人、私より太っちゃって、ふふ…)
(ね、知ってる?向こうの喫煙ルームへ入っていった子、バツ一で実家に戻ってきたのよ…)
んなの、いーじゃねーか、と知華子(ちかこ)は思う。
ガキの頃から15年もたちゃ、山あり谷あり、みんな何かしら、あって当然よ。
まだ、死んじゃった同級生がいないだけでも、ありがたいってもんだわ。
高校の同級生じゃ、自殺しちゃったのや、交通事故で逝っちゃった子、いたもんな。
立食パーティーをいいことに、知華子はどの輪にも入らず、大広間の隅でボーイから受け取ったポメリーをすすっていた。
「知華子ちゃんだろ? 布団屋の。俺、分かる?2年の時、同じクラスだった、佐藤だけど」
気づくと、隣に同じくらいの背丈…165ちょい越えくらいか…の地味な男子が、ニコニコして立っていた。
いたっけ?こんなの…。
「はあ…、ども」
そっけなく知華子は返したつもりなのだが、佐藤とやらは反応してくれたかと勘違いしたらしく、一人でしゃべり出した。
「やー、知華子ちゃん、きれいになったねえ。今は、市役所に勤めてるんだって?中学の時もそうだったけど、学級委員やったり、しっかりしてたもんなー」
あほぅ。
誰も立候補しなかったのと、内申かせぎだよ、ありゃ。
これ以上、よくわかんない奴の相手をするのも時間の浪費なので、知華子はとっとと壁をはなれ、リーデルのシャンパングラス片手に、今日来た目的の相手を探し始めた。
矢島 彩名(あやな)。
確か、彼女も自分と同じく、既婚ではなかったろうか。
中規模校に珍しく、3年間とも同じクラスだった子。
字がとても美しくて、肌の色が抜けるように白くて、髪は柔らかな天然のウェーブで。
今でも、知華子は昨日のことのように覚えている。
お人形みたいに綺麗で、清純という言葉が似合う彼女に、もう一度会いたくて。
ただ、その理由一つだけで、知華子は今日の同窓会ハガキの出席欄に、丸をつけたのだった。
でも、卒業以来、彩名とは別の高校へ進み、実際には会っていない。
年賀状をやりとりするくらい。
だから、今日来ているとは限らないのだけれど、もしかしたら…の思いが、知華子をこの会場に向かわせたのだった。
(つづく。人妻百合、いけるか?!更新はゆっくりです~)