2012年12月5日水曜日

若夫婦へのご依頼(2)★18禁シリーズ

相談の主は、和也の妹、蕗子の婚家から。
どうも、蕗子さまも旦那さまも、夜のご夫婦の事に淡泊でいらっしゃるらしく…蕗子さまのご年齢を鑑みるに、そろそろ御子の事を考えた方がいいのではないか、という事らしい。
もちろん、その他には非の打ち所がない蕗子さまを、婚家の方々は大切に扱われ、御子のこと一点だけがご心配だという。

…そこへ、どういうわけだか、蕗子さまのすぐ上の兄が若い花嫁さんを迎え、それこそ夜も昼もないくらいに睦み合っている、という話が流れてきた、ようだ。

「まあ、蕗子さまにそんな事を知られているなんて…いやいや、恥ずかしい」
ある夜、二人して自室の長椅子に座りながら、鹿乃子が、初めて和也からその話を聞くと、和也は頬を赤らめながら、
「実は、もっと恥ずかしい申し出を、されているんだ…」
と、続けた。
「俺たちが、どんな風なのか、一度、同じ部屋で、蕗子たち夫婦の前で、その…俺たちに、いつも通りに、その…」
さすがに、和也も後の言葉がつかえてしまって、うつむいてしまう。

…しばらくたって、鹿乃子が、思い切って
「か、和也さま…あの、それって…蕗子さまご夫婦の前で、私たちが、愛し合うのを、お見せする…って、こと、なんです、か…?」
と、蚊の鳴くような声で訊ねる。
「…うん、そのようなんだ…」
「ええっ!」
あまりの恥ずかしさに、鹿乃子は両頬を掌で押さえてしまった。
「さすがに、隠れて俺たちを覗くのは礼を失しているし…同じ部屋といっても御簾越しで、正面切って見られるわけでは、ないらしい…。蕗子たちもその気になってくれば、あちらの夫婦は離れの別室で事に及ぶそうなんだが…実の妹に見られながら、鹿乃子とあれやこれやするのも、なあ…」

聞きながら、鹿乃子は和也に訊ねてみた。
「あの、和也さま…、うかがっていると、ご相談というよりも…もう、それって、決まっている事のように聞こえるのですが…」
「…鋭いな、鹿乃子は。…うちの親父が先方に引け目を感じて、俺に言う前に話を受けてしまったそうなんだよ…。…ごめん…」
本当に、心からすまなそうな顔をして、和也は鹿乃子を見つめる。
「…いえ、白宮のお義父さまが、そうおっしゃったのなら…和也さまも、抗うすべがございませんわ。このお話、私になさるのは、とてもお心苦しかったでしょうに…」
自分が和也の立場なら、きっとそうだろう。自分の知らないところでそんなことを決められてしまい、結婚相手にそれを打ち明けなければならないなんて…。

優しく、和也の唇が降りてきて、しばらく二人はくちづけた。
ため息をつきながら終えると、うっとりして、鹿乃子は和也を見上げる。
「優しいな、鹿乃子は…、こんな話をしても怒らないなんて…」
「怒りませんわ。…それより、和也さまの方が、おつらいのではありませんか?実の妹御に、そんなところをお見せになるなんて…」

その後、しばらく、鹿乃子は黙って難しい顔をし始めた。
「…鹿乃子?」
心配した和也が訊ねると、もうしばらくして、鹿乃子は、ぱっと顔を上げた。

「和也さま、ご心配なさらないで。妙案が浮かびましたの」

(つづく)