2012年12月4日火曜日

若夫婦へのご依頼(1)★18禁のシリーズものです

(いよいよ百合ネタが尽きましたので、久しぶりの鹿乃子ちゃん話です。
ただ、和也君との結婚後という事で、成人向け描写が今までより増えるのは否めません~。
「そーゆーのは、や」とおっしゃる方は、なにとぞこの後の閲覧はご遠慮下さいますように)

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朱宮(あけのみや)家の若夫婦の部屋付き使用人は、長く勤まらない、と言われている。
特に夜の当直に当たった時などは、聞く方も我慢できないほどの、あられもない声を聞き続けねばならぬので。
しかし、いったん昼になれば、婿君は若くして近衛師団の中核とならん勢い、まだあどけなさの残る若奥様は、てきぱきと使用人への指図から客人の相手までこなす。
どうして昼と夜とで、こう人が変わったようになってしまうのか、使用人達はみな首をひねった。

「我々の部屋付き使用人を、なくしていただければいい。それだけの話です」
食後の紅茶を口にしながら、和也が義父母…妻である鹿乃子にとっては、実の父母…に申し上げた。
「そうは、いってもな…。一応は何かあった時のために、見張りは必要だ」
父上の言葉をさえぎるように、
「そんなの、和也様と私とで、やっつけてやりますわ!」
と、相変わらずのお転婆で鹿乃子が言う。

「ホホ…お二人とも、あんなに夢中でいらしては、賊に押し入られても分かりませんわ」
「お、お母様っ…それ、どういう事でらっしゃるのっ?!」
あわてる若夫婦に、おっとりと構えた母上は
「ほうら、ちょっとかまをかけただけで、そんなにあわてなすって…。お盛んなお話くらい、使用人達からしょっちゅう聞こえてまいりましてよ?おすごいことをなさってるようで」
と、余裕の笑みでお答えになる。
途端に、和也と鹿乃子が頬を真っ赤に染めたのは、熱い紅茶のせいばかりではないだろう。

「外のためだけでは、ありませんよ。貴方がたお二人が、睦まじくお過ごしか、諍いを起こしてやしないか、使用人はそれを確かめる役割も担っているのです。私どもは縁あって四神家に生を受け、また縁あって家族となったもの。直宮様方を御守りする役目という栄誉と引き替えに、少々の私事は使用人風情に知れても、いたしかたなきものですよ」
「今夜のお前は、やけに饒舌だな?」
「ええ、貴方。いつかはお話しておかねば、と思っておりましたの。私がこちらに嫁いで参りました折、貴方のお母様から、やはり直々にお聞かせいただいたことでしたから…」

紅茶を飲みながら、鹿乃子は、そっと思った。
(と言うことは、お父様とお母様も…お若くてらっしゃる時、使用人達が逃げ出してしまうくらいに、………、だったのかしら…?)
ちら、と横目で和也を伺ったら、和也も、目配せを返してきた。
(あ、やっぱり…和也様も、同じ事、想像してらしたんだわ…)
想像できるようで、でも全然想像がつかなくて、代わりに自分と和也の愛し合う様子を思い出してしまい、鹿乃子はもう一度、頬を赤くした。

そんな二人に、ある日、意外な相談が持ちかけられていた。

(つづく。今回はリハビリというか、ジャブ程度で…)