葉月の仕草に、ぞくり、とする。
初めてじゃ、ないのに。
私も、そして、手際を見る限り、おそらく葉月も。
こんな時に限って、葵は、何もしないで、無言で私たち二人を見ている。
それが、むしょうに恥ずかしい。
葉月は、潤滑剤のキャップを外すと、両指に塗り、私の乳首を撫で始めた。
「ひゃ…んっ!」
その冷たさと、意外な行為に、思わず私は声を上げた。
でも、冷たいのは、ほんの一瞬。
葉月の柔らかな指使いで、私の肌は次第に熱さを増してきた。
ベッドに仰向けになる私の上へ、葉月は腕立て伏せをするように覆い被さる。
瞳の奥の、強い光に、私が見とれていると、優しく唇が重なってきた。
お互いの指と指を絡ませるように、そうっと組ませてくる。
気がつくと、私はその指をほどいて、葉月の背中に腕を回していた。
「…美郷、さん…、すごく、好き…」
そう囁きながら、私のまぶたや耳元や、首筋に、キスの雨を降らせてくる。
ちょっと、恥ずかしそうに。
葉月のこと、私、誤解してたみたい。
こんなにシャイでナイーブな愛し方をしてくれる子だなんて、思ってなかった。
…ごめんね。
心の中で、私は謝る。
潤滑剤が、私にたっぷりと塗り込められ、準備が整ったらしい葉月は、避妊具の入った正方形の包みを破き、私の中へ入る支度をしているみたい。
今までの優しい扱われ方で、私もかなりリラックスしていた。
…しばらくして、私のそこは、葉月の先端を、感じる。
あ。
この感覚、ほんと、何年ぶりだろ…。
ゆっくりと、私の反応を気遣いながら、葉月は進んできてくれた。
やっぱり…ちょっと、大きい、みたい。
息を吐きながら、私は受け入れていく。
いっぱいにつながっている分、ちょっとしたお互いの動きが、思いがけない快感を生む。
葉月は、少しずつだけど、でも確かに、私の奥へと、入ってくる。
時々、じらすように引く動作を混ぜながら。
そのたびに、こらえきれず、小さく私は声を上げてしまう。
ねえ、葵?
今、この部屋のどこにいるの。
葉月と私がこんな事してるの、見てるの…?
それとも、見ないようにしてるの?
葵の事、忘れてはいないの。
でも今の私、葉月としてる事だけで、もう頭の中がいっぱいいっぱいで…
葵…ごめん。
今だけ、許して、ね。
葉月の腰づかいが、少しずつ大きく、荒くなっていく。
「や…、まだ、出てかないで…っ」
そう声に出して頼みながら、私は、身体の奥で、葉月をつかまえる。
「あ、だめ…ですっ、…みさと、さ…、そんなに、締め付けられたら、俺、もう…」
知らず知らずのうちに、私と葉月は抱き合いながら、腰を揺らし続けた。
「んっ、葉月…いい、いい…わ、もう…あなたの、好きにしてっ…」
「本気に、します…よ…?」
「…して…」
激しくて、でも、私の身体に気を遣ってくれながら、葉月は、達した。
「すみません…美郷さん、本当は、もっと…入って、いたいんですけど…外さないと…」
「…大丈夫よ、分かってるから…」
葉月は、心から済まなそうに話すと、避妊具をティッシュに包んで、ダストボックスへ落とした。
可愛い。葉月って。
セックスしてみて、かえって、その可愛らしさがよくわかって、嬉しい。
私は、ベッドの上で、葉月との一連の流れを反芻しながら、うっとりとしていた。