2013年1月1日火曜日

ぼくたちと美郷さんの初詣(健全…今回は)

あけまして、おめでとうございますっ。
と、いうわけで。
以下、おまけであります。

                            *

葵と葉月が寮の外出届けにサインをして、待ち合わせ場所の神社に着いたら、びっくりした。
美郷さんが、着物姿だったのだ。

「わー、へー…きれー…」
と、相変わらずのんびりした感想をもらしてるのは、もちろん葉月の方。

「美郷さん、着付け、自分でできるの?!」
毎年、母親と姉がケンカ腰で着付けに大騒ぎしてるのを見慣れた葵にしたら、一人暮らしの美郷さんが着物を着てる事自体、驚きなのだ。

「えへへ…一応ね。成人式と卒業式で着物、買ってもらっちゃったから、会社の夜間教室で、着付け、覚えたの。華道とか、手芸とかやってる同僚もいるのよ。外部から講師の先生を呼んでね」
「すげーなぁ…」

「…あの、着付け方、ヘンかしら…?」
あんまり葵がじろじろ見てるので、美郷さんは気になってしまったようだ。
「う、ううん。とても綺麗に着れてて、よく、似合ってる」

「本当?二人にほめられて、素直に喜んじゃおっかな」
こういう時の、ちょっと頬を染めてはしゃいでる美郷さんは、年上だけど、ほんと、可愛い。

「…ん、と…じゃあ…3人で、した後も…自分で、着付けられるから、着物OK、と…」
真顔で、とんでもない事を口にした葉月の足を、葵は思いっきり踏みつけた。
それは、葵も言いたくてしょうがなかったのに、我慢してた考えだったから。

「まあ!男の子って、みんな同じような事言うのね。大学の時のゼミの同期生達も、そうだった」
その中に、『美郷さんのはじめての男』は、含まれているんだろうか…?
新年早々、葵と葉月はどよ~んとしてしまった。

「それより、ねえ。今日は二人とも、いつもよりおしゃれしてない?似合うわよ」

葵は、明るいパープルのダウンに、黒のウォッシュジーンズ(新品)、そして青のマフラー。
葉月は、センターオープンのグレーのカウチン柄ニットジャケットに、薄めのピーコックグリーンのコーデュロイパンツ(新品)。首にはチャコールグレーのネックウォーマー。

「そ、そうですか?…嬉しいな」
「葵。お前、妙に喜びすぎ…」
「うっさいなっ。お前だって、女の人に褒められて、嬉しい癖に、葉月っ」
「ま、まあ…そう、だけど…」
着物を褒められた美郷さんより、男子高校生二人の方が、妙に照れまくっている。

「さっ、二人とも。こんな入り口にいつまでもいないで、お参りに行きましょ?」
この美郷さんの提案には、二人とも、即、賛成した。

ちょっと並んで、木の階段を何段か上がり、しきたり通りに参拝をする。
美郷さんを真ん中に、三人で。

(何、お願いしたのかな…)
と、誰もがそわそわ気になってしまう。

我慢できずに口を開いたのは、今度は、美郷さんだった。

「ねえ、どうしても気になっちゃうから、聞いちゃうんだけど…お願い事、何にした?」
「え?」
「ん…と」

「あー、じゃあ、3人で同時に言っちゃいましょっ。そうすれば、違っててもわからないし。…じゃあ、葵と葉月と、二人で、せーの、って言って?ずる、なしよ?」

美郷さんの頼みとあらば、断るなんてとんでもない。
それに、自分も、一番知りたいことだし。

「せーの!」

『今年も、3人そろって、仲良くつき合えますようにー!』
…見事なユニゾンで、願い事の声が揃った。

「やった!」
葵は、飛び上がりそうな勢いで、大声を上げる。
葉月は、顔を真っ赤にして、頭をかいている。
美郷さんは、そんな二人を見ながら、口元に袂を当てて、本当に嬉しそうに、笑みを浮かべた。

今年も、3人そろって、仲良くつき合えますように。
あまり先のことは、考えないようにして…
今、この心の中の想いに、正直に生きられますように。

(おまけ、おしまい。)