2013年1月8日火曜日

ぼくたちの美郷さん(11)★18禁

玄関先に、脱ぎ散らかした3人分の服を置いたまま、私は今度は、葵にお姫様だっこをされて、布団を敷いた部屋へ移動した。

「恥ずかしかった?美郷さん」
顔をのぞき込むように、葵は聞いてくる。

「…やん、知らない…っ」
怒ったふりをしようとしても、顔がますます赤くなってきて、ばれちゃう。
…すごかった、から…。

私、自分が二人としてる時、あんな表情してるなんて、知らなかった。
もっと、嫌そうな、痛そうな顔…してると、思ってた。
それか、思い切り、だらしのない顔とか。

でも、さっき姿見に映っていた自分の顔は、どれでもなかった。
泣きそうで、すがりつきたくて、でも、とても気持ちよさそうな、微笑みにも似た表情。
…ナルシストじゃないけど、あんな、色気のある顔、できるんだ…って、思った。

思い出すと、身体が震える。

「…寒い?ごめんね」
葵が、心配そうに、私を布団に横たえる。
上から、葉月が神妙な顔をして、掛け布団をふわりと乗せてくれる。

そんな二人が、さっきの大胆な行為とあまりに違っておかしくて、私はくすくす…と、笑ってしまった。

「え、俺達、何かヘン…?」
慌てたように、葵が聞く。
「無茶、しすぎた、かも…」
心配そうに、葉月が葵を見やる。

「…違うわ、違うのよ。…ね、二人も、お布団、入って…」
やっぱり、この二人って、あどけない所がある。
それが、好き。
さっきまで、私を泣きじゃくらせていた二人とは、別人みたい。

「えと、そういう…事なら、じゃ…お邪魔、します…」
と、照れながら私と同じ布団に入ろうとした葉月に、
「違うだろーっ!何のために、布団3組用意してもらったと思ってんだよっ。別だっ、別!」
葵は、思いっきり叫びながら、葉月の頭を後ろから殴った。

「いってぇ…、たまたま、間違えただけ、だろ…」
「いや、お前は確信犯な時が結構多いからな、俺は信じねーぞっ!」

「…ん、じゃ、葵は、どっち側の布団、借りる…?美郷さん、センターだし…」
「俺は、右だな」
言い放つ葵に、葉月はむっとして
「お、おれも右…」

「よっし、じゃんけんで決める!」
「了解…!」
『最初は、グー!じゃんけん…』

揃って声をあげる二人が、あまりにも漫才コンビ化しているので、私は
「あーっ、もう、ストップ、ストップ!」
と、続きを止めた。

「くっくっくっ…ねえ、あなたたち、寮でもそんなに面白いの…?名峰の子って、エリートだって聞いてたけど、みんな、あなたたちみたいなの?…何だか、さっきまでの、玄関先での出来事が、嘘みたいで…おかしくって…」

「あ、いや、その…すいません、美郷さん…。ムード、ぶちこわしで…」
「違うのよ、葉月。怒ってなんかないわ。ただ、面白すぎるのよ、二人とも…」

「んー、俺は、名峰学館の中でも、チャラい方だって言われます。で、葉月はむっつり、と」
「…俺のことは、余計、だと思う…否定、しないけど…」
もう我慢できなくなって、私は、二人の会話にプーッと吹き出してしまった。

「わかった、わかったから…もう、お布団に入って?…でも、どうして右側なの?」
「それは、右の布団で寝たら、美郷さんの右手と、手をつなげるでしょ?だから」

「え?葵、左手じゃダメなの?」
「だって、美郷さんは右利きでしょ?お布団の中で、指をこちょこちょして遊んだりできるのは、やっぱ右手じゃないと」
「…葵は、違う所まで、くすぐりそうで…心配だ」
真剣に言う葉月がまたおかしくて、私はケラケラ笑ってしまう。

「んもう…じゃあ、時間制で交替するとかして、とにかく二人とも、お布団に入りなさい。玄関先で、あんなことしたんだから…早く暖まらないと、風邪引いちゃうわよ?」
さんざん騒いで、結局交替制で、葵が先に右を取って、揃って横になった。

ああ…今夜は、静かだな…。
外もだけど、私の心の中も、不思議と落ち着いている。

自分の部屋に、二人が、来てくれたからかしら。
それで、安心してるのかもしれない。

右側の布団から、葵が、そうっと手を伸ばしてきた。
女の子に慣れてるようで、実はデリケートな彼の気持ちが、触れた指から伝わってくる。
ゆっくり力を込めて握ると、ちょっとびくっとして、それから、同じように握り返す。
…可愛いわ、葵。

そうしたら、あまり間をおかずに、葉月の指が、私の左手を探る。
ここよ、と指を伸ばしてあげたら、ふうわりと掌を全部包み込んだ。あったかい。
指先でちょんちょん、とつつくと、寡黙だけど優しい彼らしく、指を撫でてくれる。
…嬉しいな、葉月。

ふうっ、と私は静かに息を吐く。
3人して手をつないで、激しくなんかないのに、心もつながっていくのが、わかる。
今夜は、このまま、眠っちゃおうかしら…。

…こういう場合、私の予想は、まず間違いなく外れる。

来るかと思えば来なくて、ないかと思えば、とんでもない事になる。
今夜も、さっきすごかったから、もうないかしら…と思っていたら、とんでもない。

「今日は、布団で広いし…俺、最近美郷さんとひとつになれてなくって、正直言っちゃうと、欲求不満だったんだ。おいしい所は、葉月にもってかれちゃうしさ?…ね、しよ?」
直截的な口説き文句で、葵は、私を布団の中で抱きすくめる。

「…ずるいぞ、葵…」
「だって、本当だろ?葉月も、たまには美郷さんと俺がするの、見る側になってよ」
え…た、確か、葵って、葉月にされる方の側じゃ、なかったっけ…?

「お願い、美郷さん…。俺、またあなたがすごく感じてくれる、あの場所に…行きたい」
その一言で、私は、瞬く間に、葵とした時に彼が探してくれた、淫らな一点を思い出す。

始めた途端に、葵は、掛け布団をはいで、何もかも葉月に見せつけてしまった。
「あ、うそ…っ、ねえ、葵、恥ずかしいわ…こんなの…」
こういう展開になってしまうと、自分の部屋でしている、というのが、たまらなくいやらしく感じられて…ああ…っ、内緒…だけど、感じ…ちゃう…。

触られたり、舐められたりしている、私のその一点を、葉月は痛いくらいに見つめている。
…だめっ、だめよぉ、そんなに…見ちゃ…だ、め…

「…すごく、いやらしい目つきしてる…美郷さん」
「やだっ、葵ったら…そんな、こと…」
でも、否定できない自分がいる。
久しぶりに、見られながらの一対一でのセックスは、前よりも私を興奮させた。
「もう、潤滑剤、いらないよ…ほら」
葵の指先が、これから彼を迎えたくてすっかり濡れているそこを、くちゅ…と撫でる。

「ああんっ!…ね、いじめちゃ…いや。…もう…はやく…はやく、きてぇ…っ」
自分で聞いても、耳をふさぎたくなるくらい、淫乱で、甘ったれて…正直な、言葉。

葉月…こんな私を見て、興奮してくれてるのかしら…
なんて、今から入ってきてくれる葵と違う男の子のことを考える私って、最低…?

支度を調えた葵が、彼の言うとおり久しぶりに、私の中へ入り始めた。
「はぁ…んっ!」
「うわ、たまんない声…俺達、すっかり、やらしくなっちゃったね…」
「…うん…」

私の髪を解くように触りながら、葵と私はキスをする。
何だか、すぐにはやめたくなくて、私も葵の頭を抱くようにして、髪を撫でた。

葵は、キスを長く続けながら、それと同時に、少しずつ、少しずつ…入ってくる。
キスの向きを変える時、一瞬、唇が離れる。

その時、小声で葵は「あったかい…それに、すごく、キツくなったね…美郷さん?」
「や…」
私の反論を封じるように、再び、葵はキスしてくる。

知らず知らずのうちに、私は両脚を曲げて、膝で葵の身体を締めるように抱きつく。
葵だって…前より、キスが上手になって、入ってくるそれも…大きくて、すごい…

そんな風に、伝えようと…思ったのに。
だから、身体で伝えていたみたい。

やがて、私たちは、二人だけの秘密の甘い場所へ再び、たどりつく。
そこから先の、葵と私とのセックスは…前までの、比じゃ、なかった。

葵が片手を伸ばして、私の両手首を拘束する。
私はどこも触れることを許されず、ただ、腰を揺らして感じ続けるだけ。
それから、恥ずかしい姿をさらして、声をあげ続けるだけ。

自分でもどうかしらと思ったけど…抵抗する声も、そうする気も、全く起きなくて。
ただもう、葵のいいようにされながら、自分もいけるところまでいきたくて。

…ほどなく、私が激しくいってしまったせいで、葵に貸した分のお布団は、使えなくなってしまった。

(つづく。…もう、勝手にやってなさい…)