2013年1月11日金曜日

ぼくたちの美郷さん(12)★18禁

すっかり、葵に翻弄されてしまって、結局二つのお布団で、3人して眠ることになった。
葵は、私を抱き疲れてしまったのか、健やかな寝息を立てている。

私もやっと熱っぽさが取れて、うとうと…と、まどろみ始めた頃。
「…美郷、さん。…寝ちゃった…?」
反対側から、小声で葉月が話しかけてきた。

「…大丈夫、美郷さん。今夜は二回もしたから…もう、俺、しないよ。…でも、抱いて、寝たいんだ。…だめ…?」

うわ。
葉月、初めて会った時より、すごく口説き度がレベルアップしてる…っ。

「…本当に、何もしない?」
つい、私もひそひそ声になってしまう。

「うん。…来て…?」
お布団の中で両手を広げて迎えてくれる葉月の胸の中へ、そうっと私は忍び込む。

…そうよね。
二人で一度、葵が二度目、だから…葉月とも二度目で、フェアだわよ、ね…

こわれ物を扱うように、大切に、葉月は抱いてくれた。
今日も、肌が熱くて、気持ちがいい。

「…美郷さん、やわらかい…そうっと抱かないと、溶けちゃいそう…」
「ばか…。どこで、そんな殺し文句、覚えてきたの?」
「男子寮で、覚える、わけない…美郷さんの、身体が、俺に…教えるんだ…」
「そういうのを、殺し文句って、いうのよ…葉月ったら…」

ただ抱き合って、肌を重ねながら、小声でおしゃべりを楽しんで。
それだけなのに、葉月が、私を芯から想ってくれているのがわかる。

葵のように、激しいのも、好き。泣いちゃうくらいに。
でも葉月みたいに、ゆっくり、ずうっとこうして抱きしめ合っているのも、好き。
…ずるい女、だわ。私。

「この、まま…寝ちゃいたい、な…」
葉月が、私の目をまっすぐ見て、言った。
思わずうなずきそうになるのを、ぐっとこらえて、私は拒む。

「だめよ。葵が、やきもちやいちゃう。私たち、3人でいつも一緒でしょ?だから、眠る時は、一人ずつよ。…あ、でも」
「…?」
「葉月と葵が一緒に寝る分には、私、やきもちやかないから。心配しないで、ね?」

そう言って、片目をつぶると
『…み、美郷さんっ!』
私の両隣から、あわてふためいた声が揃って聞こえた。

「あら、葵、起きてたんじゃない。たぬき寝入りしてたの?…可愛いのね」
「ぬ…盗み聞きは、趣味が、悪い…葵」
「ちーがーうっ。何かひそひそ聞こえてくるから、目が覚めて、そしたら、葉月と美郷さんがいちゃいちゃしてたから、気になったのっ!」

「…はいはい、ごめんなさい。でも平気よ、肝心な事は3人揃った時にしかしないんだもの、私たち。それより…せっかく起きたんだから、今夜まだ、してなかったあなたたち、今から…しちゃったら…?私は、もうくたくたで眠ってしまうけど、二人は…まだ、できるんでしょ…?」

半分構いながらけしかけると、葵も葉月も、お互いをちら、と見ながら、あっという間に顔を真っ赤にしていった。

「…図星、ね?おねーさんには、何でもわかっちゃうんだから。じゃ、私、乾いてきた方のお布団に、タオルケットを敷いて寝るわ。二人は、身体が大きいんだから、真ん中と端っこの、二つのお布団を使って?…じゃ、おやすみなさい…」

本当に、もう私の身体は、乱れた記憶と、温かな満足とで、十分だった。

クローゼットの中にある、クリーニングのビニール袋から出した夏物のタオルケットを、さっき葵と激しく抱き合った敷き布団の上に敷いて、私は眠った。
男の子二人に、背中を向けて。

…だって、見えたり聞こえたりしちゃったら、きっと、眠れなくなる…

今回の予感は、珍しく、的中した。
私は、さっそく、寝られなくなってしまった。

理由は…決まってる。
葉月が、優しいけれど容赦なく攻めて、葵が、甘い声を上げていかされ続けたから。

お布団のきしむ音から想像するに、かなり激しく、いろんな形で愛したみたい…
ちょっと、私には言えないようなすごい言葉も、だいぶ聞こえてきた。

そして、私が驚いたのは、相手を呼ぶ声。
二人とも、相手の名前を呼ぶ時の声が、ぞくぞくするほど、いい。
気持ちをいっぱいに込めて、いとしいと思いながら、呼んでいるんだろうな。

その「名前よび」だけで、私はタオルケットをちょっと蹴りながら、もじもじした。
私も、二人にあんなふうに、呼ばれているのかしら。

そう…二人が私を呼ぶ声も、いつも、優しい。
待ち合わせ場所で会ったときも、激しい行為の最中も、そっと抱かれる時も。

…嬉しいな、私って、幸せなんだ…。

二人の熱っぽい声がだんだん遠くなり、私は、そのうち眠ってしまった。

(つづく)