2013年2月8日金曜日

制服(百合短編~)

奈々の入学年度まで、ここの女子校の制服は、紺のセーラー服、白のスカーフ。
で、ひとつ下の代からは、グレイのブレザーにジャンパースカート、緑のネクタイと変わった。

別に共学校になったわけでもないのに、どうして変わったのか。

ましてや、自分たちが着るわけでもない制服を、前年度の生徒総会と実行委員会で決めるというシステムも、何だか変な話だ。

奈々は、そう思う。

とはいえ、自分のセーラーが嫌いなわけではなかった。
今年入学してくるという後輩の桃子が、自分と違う制服を着ることになるのが嫌なのだ。

一緒に校内・校外のどこにいても、学年が違う、とすぐにわかってしまう。
それが、気恥ずかしい。
別に後ろめたい訳ではないのだが、何となく。

中学の時、桃子はいつも奈々の腕につかまるようにして、甘えてきた。
それが奈々にとっても嬉しかったし、いつまでも甘えていて欲しいとさえ思った。

だから、一人で先に高校へ進学した一年間、退屈で寂しかった。

一年我慢すれば、同じセーラーを着て、また桃子がきゃっきゃっと甘えながら過ごせる日々が来ると思っていた。

なのに…。

無論、生徒総会で、奈々は制服改正に反対票を投じた。
でも多数決の論理というやつで、「戦前からのセーラーは古くさい、これからはブレザーに変えよう」という意見が、通ってしまった。

つまんない。

ブレザーできゃっきゃっされても、何だか服だけ見ると、桃子の方が年上っぽく見られそうで。

そして迎えた、入学式。
桃子を目の前にした奈々は、目を疑った。

自分と同じ、紺のセーラーにふわりと白スカーフを結んだ桃子が、そこに立っていた。

「え、今年から…ブレザーじゃ、なかったの…制服?」
目を丸くして、駆け寄りながら奈々が聞く。

「えへ、オリエンテーションで聞いたんですけど、姉妹で制服を融通するご家庭もある関係で、この三年間は、制服、移行期間になるんだそうです。あたし、お姉ちゃんはいないけど、奈々先輩と同じ制服が着たいから…親に頼んで、セーラーにしてもらったんです」

にこにこっとして、桃子も奈々の方へと駆け寄り、紺サージの長袖につかまった。
そうして、中学校の時そのままに、きゃっきゃっと笑う。

桜の花の下、新調したセーラーの春めいた匂いが、心地よく奈々を包み込んだ。

(おわり)

*おまけ*
懐かしくて好きな曲「制服」(松田聖子さん:歌)にインスパイアされて、百合バージョンにしました。
受験、卒業、入学…あわただしい日々が続きますが、エールの代わりに!