2013年10月5日土曜日

(BL18禁)甘いお役目(4)

ぼうっとした中でも、真一さんとの約束を思い出しながら、僕は勉強して、土曜模試を受けた。
いつもより手応えがあったかどうか、それは、分からない。
ただ、思っていたよりも腐抜けた回答は書いていなかった感じ。

真一さんの教えてくれた場所は、バスの終点の駅ビルターミナルだった。
約束の時間に、東口のエスカレーター前に行く。
もう、背の高い姿が、そこに見えていて、僕はあわてて走っていった。

「ご、ごめんなさ…真一、さん…待たせ、ちゃっ…」
「そんな息を切らせて、走ってこなくても良かったんだよ、ドリ。時間ぴったりだったのは、ドリの方なんだから?」

…まだ、真一さんの口から「ドリ」と呼ばれるのに慣れなくて、僕はかあっと頬を紅くした。
そんな間抜けな僕を、真一さんは目を細め、優しく見つめてくれていた。

「…じゃ、ここのトイレで私服に着替えて、出ようか…。チェックイン、2時で予約してあるから。ダブルで」

え?

目を丸くして見上げるぼくに、真一さんは、つん、と額を指ではじく。
「こら、ドリ。どこ行くと思ってた?俺が取ったのは、普通のシティホテルだぞ」
「え、わ、んと、いやそのっ」
「その気、だったんだ?」

真一さんは、今度はいたずらっぽく瞳を輝かせて、ぼくの顔を覗き込んでくる。
「も、もう…知りませんっ、ぼく!からかわないで下さい…っ」
照れまくる僕に、真一さんはくすくすと笑いながら
「ごめんごめん。あんまり、ドリが可愛かったからね?じゃ、着替えようか…」
「あ、…はい…」

そうだよな。場所は違っても、これから真一さんとしちゃう事は、変わらないんだよな。
ドキドキしながら、僕は、着替えの入った紙袋を胸に抱くようにして、エスカレーターに乗った。

僕が先に個室へ入ると、びっくりしたことに、ドアの隙間をすごい勢いですり抜けて、真一さんが入ってきた。

「えっ?」
「…ごめん、ドリ。もう俺、我慢、できない…」
せっぱ詰まったセクシーな声でそう言うと、真一さんは、個室の中で僕を痛いくらい抱きしめた。

「わ…っ」
「ずっと、ずっと今日が来るの、待っていたんだ。試験の勉強が終わって、模試が済めば、ドリと初めて、抱き合えるんだ、って…」
「しっ、真一さ…んっ。……その、ぼ、僕も…」
「…ドリ?」
「だっ、だから…勝手に、ラブホテル行くのかな、とか、やらしい事、思っちゃってて…」
「ドリは、そっちの方がいい?」
真一さんの質問に、僕は首を横に振って答える。

「え…と、その…。やらしいとこより、真っ白いシーツが敷いてある、普通のホテルの方が、真一さんらしくって…好き、です…」
ホテルが好きなのか、真一さんに告白してるのか、抱きしめられたままのぼくは、だんだん目の前がぽうっとしてしまって、よくわからなくなってしまった。

真一さんが、優しいキスをくれる。
「…着替えようか、ここで、二人で?」
「え…、…あ、…はい…恥ずかしい、ですけど…」
「俺も、だよ」

狭い個室の中で、互いに相手の制服のネクタイを外し、シャツのボタンをはだけていく。
それは、とても淫らな行為に思えた。
ただ、着替えているだけなのに。
唇や首筋や、胸へのキスが、服を脱ぐたびに増えていく。

「あ、は…ぁっ」
「しいっ、ドリ、静かにして。一応個室とはいえ、ここはまだ、パブリックな場所だから…」
「じゃ、じゃあ…真一、さ…ん、も、ぼく…だ、め…。ここで、そんなに、しない…で…?」

自分のひそひそ声が、今まで聴いたこと無いくらい、甘ったるく個室に響く。
薫ねえちゃんに言われたからだけじゃなくて、自然に、そういう声が出ちゃったんだ。
私服に着替えるって言いながら、ぼくが最後に身につけているボクサーブリーフに手をかけようとしている真一さんに、ぼくは涙のたまった目で、いやいやをした。

「ごめん、ドリ。いじめるつもりじゃなかったんだ。…可愛くて、今言ってもらうまで、正直、夢中で歯止めが効かなくなってた。…許して、くれる?」
こくん、と小さく頷くと、ぼくと真一さんは、ほとんど裸に近い姿で抱きしめ合った。

「じゃあ、この続きは、着替えてからで…いいね?」
「うん。…真一さん、お願い。…して…?」
この一言は、ちょっと、薫ねえちゃんの受け売り。
そうしたら真一さんは、ちょっと頬を染めて、ぼくの唇をくわえこむ。
舌を絡め合わせた深いキスは長く続いて、私服を着るのは、チェックインぎりぎりになってしまった。

(つづく。やっとそれっぽくなってきたな…次はチェックインさせるー!)