カードキーをスライドさせている、真一さんの手を見ながら、僕は考えていた。
こんな光景をみるの、どのくらい久しぶりなんだろう…
家族旅行で泊まったとき?
それとも、中学の時の修学旅行で行った、宿泊先のホテル?
こんなふうに、好きな人にドアを開けてもらう日がくるのは、もっとずっと先だと思っていた。
人生って、何が起こるか分からない。
真一さんが、ドアを押し開ける。
「ドリ。…おいで」
きっと今、僕の顔は赤く染まっている。
それを見られるのがとにかく恥ずかしくて、僕は、小走りに部屋へ入っていった。
僕の後ろで、ドアを閉める重い音が聞こえる。
カードキーをスイッチにして入れたのだろう、電気がついて、部屋が明るくなる。
そうして…ドアの鍵とストッパーを、静かに、かける音。
背後から、抱えている紙袋ごと、真一さんは僕をぎゅっと抱きしめてきた。
心臓がばくばくして跳ねて、それが全部、真一さんに分かってしまうようで、すごく困る。
でも、すごく…嬉しいし、気持ち…いい。
「ドリ…?」
急に、耳元でそっと囁かれて、僕は、ぞわぞわとする。
…これ、感じてる、んだ…。
甘い毒を注ぎ込まれて、何もかも奪われてしまいそう。
でも、それでも、いい。
「しんいち、さぁ…ん」
自分でも知らなかった、甘えた声。
「…感じてるんだ、ね?」
聞かれて素直に、ん、と頷いてしまう。
「…ね、……ベッド、大きくって…やらしい…」
小声で僕が言う。
目の前には、男二人でも十分寝られる広さのベッドと、ソファとテレビ。
ベッドサイドの小テーブルには、一輪挿しにガーベラ。
「やらしくなんてないよ。それは、ドリが…勝手に何か、考えてるから、でしょ?」
「…いじわる」
「そう、俺は意地悪だよ。ドリを可愛がりたくて。…何してほしいの?」
真一さんは、僕の口からそれを言わせたいみたいで、手をゆるめない。
「…もっと、いじわる…して…?」
自分でも目が回りそうなくらい、恥ずかしい台詞。
でも、言いたかったんだ。
「…ああ。覚悟してて…」
僕はベッドまでたどり着く前に、着ている物を全部はぎ取られた。
真一さんも何も身につけない姿になり、二人して倒れ込むようにベッドの上に横たわる。
しばらくは、抱きつきあって、唇を重ねあわせているのに、二人とも夢中だった。
真一さんの体は、すごく熱い。肌がとてもすべすべしていて、気持ちいい…。
僕は、自分から夢中で、真一さんにすがりついた。
真一さんの唇が、僕の肌を探るように、あちこちに落とされていく。
上から、下へとだんだん動いていき、僕は、不埒な想像にどうにかなりそう。
「だ、だめ……しんいちさんっ、そこ…だめぇ」
「…どうして?こんな…勃ってる」
僕の一番反応している尖端に、真一さんの唇がそっと触り、舌が柔らかくそこを舐める。
「だっ、だって、あっ…あ、す、すご……い…っ」
真一さんの唾液で濡らされ、僕のそこは、ますます反応して大きく張り詰めていく。
あ…っ、僕は今、大好きな先輩に、一番恥ずかしい所を…しゃぶられてて…すごくすごく、気持ちがいいよ…ぉ。
そんなような事をわけも分からず大声でわめきながら、僕は、真一さんの口に、初めてフェラされた快感の証を弾けさせてしまった。
どうしよう…すっごく、いい。
もう、一人じゃできないかもしれないくらいに。
「ドリ…一回出したのに、もう勃ってるぞ?…感じやすい悪い子だな…?」
「え。じゃ。……嫌い…?僕」
「正反対。エロいドリをいじめて、余計好きになった…」
「や、だ…真一さん、ひどい…僕、エロくなんてないよ…」
「じゃあ、もう一度射精してみるかい?俺の口に」
「やだ、ねえやだぁ、…僕も、真一さんに…したい…」
「ドリ。…やっぱ、お前はエロいよ、可愛くてエロい…」
「違う、ちがうよっ。…そ、その、真一さんの、あれが、僕も、ほしい…っ」
「飲んで、くれるの?…美味しくないのを」
「欲しいんだ、そうして、真一さんも、僕と同じくらい、気持ちよくなってほしいんだ…」
初めての、行為。
でも不思議に、嫌悪感はなかった。
ただ、真一さんを自分と同じくらい気持ちよくさせたい、それだけ考えた。
「あ…ドリ、上手だ…よ、…んっ、そろそ…ろ、…ああ…いいっ」
真一さんが噴き出したものは、予想より多くて、熱くて、ちょっぴり苦かった。
少しもこぼさないように、そう思って、舌や唇でぬぐいながら、舐めて、飲んだ。
ああ…また、真一さんも僕と同じに、…大きくなって、くれてる…。
僕と真一さんの時間は、昼間か夕方から、こうして始まっていったんだ、
(つづく…やたらと眠いので、間違いあったら後日お詫びしますー)