さっきまで、ぴんと張られていたシーツが、僕の手で握りしめられて、くしゃくしゃになってゆく。
机の上に飾られた真っ赤なガーベラが、ゆらりと潤んで見えるのは、きっと僕の涙のせい。
…真一さんに、されるがままになりながら、僕は、はしたなく乱れてゆくばかりだった。
男同士のやりかたがどんなものなのか、ねえちゃんに相談してから、僕なりに調べたっけ。
何だかわかるようでわからなくて、でも、女の子とする時とかなり似てるのは、わかった。
それから、どんなところが、決定的に違うのかも。
「…あ。……や、いい…っ」
「ドリ」
いやいやをしながら体中を震わせる僕を、真一さんは俯せにさせる。
ああ、この後は、あれをしちゃうのかな…。
でもそれじゃ、僕は、気持ちよくされる一方で、真一さんに何もしてあげられていない。
さっき、口でしただけ…
「背中、汗、かいてるよ」
指が、僕の背骨の上をすうっ…と撫でていく。
だめ、ぞくぞくしちゃうよっ。
「…ね、真一さん…」
「なんだい…?」
優しい声で聞き返されて、僕は、また震える。
「ぼ…くも、ただ…感じてる、だけじゃ、なくって…真一さんに、なにか…して、あげた…い」
言いながら、涙が頬をつうっと伝って落ちていくのがわかった。
「…ドリ?」
ちょっと微笑んだような声が不思議で、僕は真一さんを振り返る。
馬鹿な事言ってる、と、思ったのかな…?
はずれ。
真一さんは、ガーベラと同じくらい、真っ赤に頬を染めて僕を見ていた。
「もう、十分、してもらってるから、心配しないで」
「え…?」
「そんなに乱れて、可愛い声を上げ続けていられたら、俺の方がまいっちゃうに決まってるだろう?」
「そ、そんなに…やらしい…?」
「うん。…たまんないよ。だから、こんな事も…したくなる」
とまどう僕に、真一さんは、本で書いてあったことを、した。
今まで誰にも見せたことのない、ぼく本人も見たことのない、場所…真一さんと、きっとこの後つながる場所に、そっと、濡れた指が触る。
「ひゃっ?!」
「ごめん、冷たかった?…少し前に掌に出して、温めておいたんだけど。大丈夫、専用のローションだから、怪しげな物じゃないよ。それに…ちょっと、いたずらを仕掛けてある」
「え、ええっ?」
「これ、しばらくすると、じんじん熱くなって、痺れたみたいになってくるらしいんだ。…ドリの、もっともっと乱れていく様子を見たくて…買った。ごめん…?」
もう、その説明を聞いている間にも、僕は、真一さんに塗り込められ続けているその媚薬めいた物に翻弄され始めていた。
初めての時からそんなに感じる場所じゃない、と本で読んだ所が、熱くとろけていく。
真一さんがぼくのそこを、ゆっくりと撫でてくれるだけで、もう前の方も反応してしまった。
「や…シーツ、濡らしそ…っ」
「もう、少し…零れてる、よ」
「あぁん、ばか…っ、しんいちさんのばかっ…」
這った格好で真一さんに指で撫でられながら、僕は本気で泣き声混じりになっていく。
「じゃあ、やめる…?」
「やんっ、やだあ、しんいちさぁん…や、やめないでえ……」
「『もっとして』って、言ってごらん?」
いきそうになるのを必死でこらえながら、僕は、その優しい命令に自ら服従する。
その後の、想像しただけでどうにかなりそうな、報酬を期待して。
「ん…あぁ…、ね、しんいちさん…しんいちさぁん、もっと、もっと…して…っ?…欲しい…っっ」
熱く痺れた僕の中へ、真一さんの、同じく熱い指がゆっくりと滑り込む。
「ああ、ああんっ、な、何それ、すごいっっ…」
目の前のシーツをいくら握りしめても耐えられないほどの快感が、僕を襲う。
「…ドリ、よくできました、だね…?」
真一さんの声も、とろけそう。ちょっと…震えてる…?
ローションを時々垂らしながら、ゆっくり、真一さんの指が抜き差し寸前の動きをする。
もう、とっくに僕はいってしまった。
言葉も出なくなって、胸までシーツにぺたんと這いつくばりながら、わけのわからない声を上げる。
「ドリ…ドリ。可愛いよ、…すごく可愛い。いやらしい子だね…」
指の数は、きっと増えてると、思う。
でも、気持ちよく痺れてしまって、僕のそこは、いくらでも受け入れてしまいそうだった。
「…ね、しんいちさん…欲しい、欲しいんだ…ねぇ、……来て…?僕と、一緒に…」
その直後、僕は自分の甘えたおねだりの言葉に後悔した。
さっきまでとはまるで違うものが、僕の中に、熱く差し込まれてゆく。
ゆっくり、すごくゆっくり…真一さんが、とても気を遣ってくれているのも、感じる。
だけど……痛い、正直。
固まった体の僕に、心配そうに後ろから真一さんが声をかけてくれた。
「やっぱり…やめようか…?その、今日はまだ…初めてだし…」
「…っ、やだぁ…っ、…やめちゃ、やだ……い、痛いけど…したい、…したいよ…僕」
「ドリ?…無理してないか?」
返事の代わりに、僕はぶるぶると首を横に振る。
「…わかったよ。じゃ、…ゆっくりと息を吐いて、ちから、…抜いて…?」
言われたとおり、僕はそのままの姿勢で、ゆっくりと深呼吸をする。
僕の上に、真一さんが覆い被さるようにして、シーツを握りしめた指を一本ずつほどいてゆく。
「あ…っ」
そんな風に上へこられたら、ふ、深く、なっちゃう…っ。
真一さんは、汗まみれの手を右手で解放しながら、左手で僕の腰をしっかり掴んでいる。
「は…っ、あぁ…そ、そんなとこ…まで…ん…っ」
女の子じゃないから、僕と真一さんの抜き差しには、突き当たりのゴールがなくって、真一さんの腰骨が当たるかどうか…
また、僕は真一さんに泣かされ始めた。
今度は、かなり長いこと。
ゆっくりと、でも深くて、けっこう容赦ない感じで…ああ…っ。
今頃になって、ローションの媚薬が、かなり効いてきた感じ。
痛みじゃなくて、快感に僕の体がじんじんと熱くなる。
「はんっ、ああ…しんいちさんっ、ああっ…いい、いいよぉ…っ」
「…いいの?」
優しすぎる声が、僕の耳に染みこんでくる。
「いい、いいよ、ど…どうしよ、ああ…よすぎちゃう…!」
「…ああ、俺もすごく、きてる今、…ドリ、そんなに、締め付けないで…」
「やだあっ、ばかっ、そんな恥ずかしいの、だめ…だめぇ」
真一さんは、僕の腰を両手で押さえ込みながら、抜き差しを次第に速くしていった。
あ…も、かなり、僕…近い、かも、しれないよ…っ。
(つづく。→でも次回くらいでラストにする予定です。真一さんとドリちゃんも大変そうだし!)