2012年5月22日火曜日

キス。(1)

まだ、だれともしたことがないから、どんなものか分からない。
でも済ませた友達は、いろんな言い方で、るみかに教えてくれる。

「お互い緊張しててね、歯がぶつかっちゃったのよ」
「ファミレスでケーキセット食べてから、公園の陰でしたから、すっごく甘かった~」
「年上のカレシでさ、こっちは背伸びするのに精一杯で、あんま覚えがなかったよぉ」

一通りの情報として仕入れてはおくものの、るみかにとって、これらの情報はも一つ物足りない。
と、いうのは。
るみかがキスしたい相手は、男の人ではないからだ。

いつも薄いローズピンクのリップをさりげなくつけていて、肩までの焦げ茶色の髪もさらさらのストレートな、藤川早苗。
天然パーマでその上髪が多く、もしゃもしゃ直前の髪をワックスで落ち着かせて登校してくるようなるみかからすると、歩く理想そのもののクラスメイト。

(でも、キスしたいなんて言ったら、気持ち悪がられるだろうな…。絶対、藤川さんも男の子を恋人にしたいに決まってるし)

早苗も、るみかも、それぞれ別のグループで中心的な役になっているので、話し合うチャンスにもあまり恵まれない。

(変な話だけど、うち、女子高だし、クラス内のグループで合コンとかするのってアリかな…?)
るみかは、なんとか早苗に近づきたくて、知恵を絞った。