2013年9月22日日曜日

(BL18禁)甘いお役目(2)

「…ふーん、で、告られてお受けした、と。ごちそっさん、碧(みどり)くん」
「あっ、そういうんじゃなくて!ちょっと、マジ相談乗って欲しいんだよ、ねーちゃん。…他に誰にも、こんな事聞けないだろ…?」

帰宅の挨拶もそこそこに、僕は従姉の薫ねえちゃんに携帯をかけた。
ねえちゃんは、見た目も気性も僕より昔からずっと男前で、やたら女の子にもてていた。
本人はそれにうんざりしたらしく、大学を出ると、一部上場の彼氏をゲットして、さっさと家におさまってしまった。

しかし、昔のままの気性は変わらず、今は流行の「腐女子」というやつにはまって、マンガやアニメに出てくるイケメン達の誰と誰をくっつけようか、同好の士ときゃいきゃいやってるらしい。

そんな薫ねえちゃんなら、先輩の友達より、けっこう突っ込んだ内容まで聞けると踏んだんだ。

「…んー、でも、ドリ(僕のあだ名)さ、一番はあんたの気持ちじゃない?」
「うん…」
「男同士だからさ、手を繋いで街を歩いたりとか、ましてや結婚とか…できないよ? それでも、SEXする覚悟、あるわけ?」
「ねっ、ねねねねーちゃん、旦那さん聞いてたらどうすんだよ、コレ!?」
「あー、この手の相談電話、よくかかってくるから慣れてるって。それに今夜は、残業だし」


「…ま、ねーちゃんの夫婦関係を心配してくれてるくらいなら、覚悟あり、ってことかな?」
ちょっと優しくなった口調に、僕は小さく声を出して、こっくりする。
「じゃあ、どんな事が気になるのよ?」

「そ、その…僕が、されるみたいな側、なんだけど…。…どうしてあげたら、いいのかな、って…」
「うっわー、ドリ、可愛い事考えてるんだね! うーむ、こりゃ惚れられるわ」
「だからぁ、茶化してないで答えてよ!」

「茶化してなんか、ないって。ドリの、そういう相手を想う気持ちが、一番大事なんだよ?」

泣きかけた僕に、ほんのりとした声で、ねえちゃんは答えてくれた。

「よくさ、してくれる方に全部任せちゃって、いわゆる『サボっちゃってる』ヤツがいるのよ。男でも女でもね。だけど、それって、本当に好きな相手だったら、そんな失礼な態度、取らないよね?」
「う、うん…。よく、わからないけど、先輩に喜んでもらえることって、どんな事があるのかな…って、女の子じゃないから、よく分からないし…」
ふんふん、と携帯の向こうで、ねえちゃんの頷く様子が聞こえる。
「…で、男同士の趣味に詳しいねーちゃんに聞いたら、教えてもらえるかな、って…」

「男女、関係ないよ。ドリ。愛してもらう方の人間が出来ることは、ひとつだけ」

「え?」

あまりにもズバッと切りまくった答えに、僕は正座をしてしまった。

「簡単な事だよ。その先輩にしてもらっている事が気持ちよかったら、泣きわめいてどうにかなっちゃうくらい、気持ちいいって教えてあげること。言葉でも、身体でも、表情でもいいから、ドリの一番やりやすい方法で。…それが、相手の先輩に一番喜んでもらえる方法!」

「えーっ!は、恥ずかしいよ、ねーちゃっ、そんなっっ!!」
「バカねえ、だから先輩は嬉しいんじゃないの。他の誰にも見せない、ドリが恥ずかしがりながらも、先輩に負けていっちゃう姿とか声とか、さ…そういうのが、一番のお役目なのよ、あんたの側の」

「…ああ、それから逆もアリだからね。されてても、今ひとつだな~とか、痛いとか、そういう時にもちゃんと口で伝えないと、ダメだよ。そうじゃないと、ドリにとってSEXが苦痛になっちゃって、先輩のことも嫌いになっていっちゃうから…」

「…そ、それで、いいんだ? …わかった…ありがと…」
「うん。思いっきり、先輩にすがりついて、狂っちゃいなさい!事後報告を待ってるから~」
「え、えぇっ?」
「うーそ。ふふっ、なんか、その先輩とやらが、ドリを可愛く想ったの、分かるような気がするわ。ましてや、思春期真っ盛りの、高校生だもんねー」
「…ぼ、ぼくだって、思春期だよっ。いつまでも子供扱い、しないでよなっ」
「してないじゃん? 嬉しかったよ、あたし。ドリが、初体験の相談してくれたなんて。へへ」
「うん…僕の方こそ、ちょっと、ううん、かなりホッとした。…ヘンな言い方かも知れないけど、がんばって、みる」
「うむ、健闘を祈るぞ」
勇ましい薫おねえちゃんの声と同時に、携帯は切れた。

(つづく。…続いちゃうよ、あー)