2010年12月27日月曜日

いちごボーイ(3)

いかにも女子校の体育だな、と私が思ったのは、ダンスの時間の多さだった。
目尻が気持ちきりりとつり上がった、勝ち気そうな若い女の体育教師の指示にしたがって、クラスの皆がそれぞれに体をほぐしたり、動と静を繰り返したり。
次は流れてくる音楽に合わせて、好き好きに動いたり、小走りに体育館のフロアを駆けたり。

いつもの学校指定のジャージ姿でも、はにかんだり、シラけたりしながら授業を受けていたクラスメイトもいた。
見た目から言えば、私も本当は、そっちのグループにいた方が似合っていたかもしれない。
でも、男子が見ていない気安さと、運動神経はよくなくても体を動かす楽しさを感じ始めたせいで、いつのまにか、私は普段の体育より真剣に取り組んでいた。

単元のまとめに、課題が出た。
「次の時間、1人1分間、自分で自由に考えてダンスを発表しなさい。音楽や効果音は自由、なくても構いません」
えー、キャー、やだ難しいー、などの声が予想通り体育館に響き渡る。
その中で、不思議に私の心は、すぐにテーマを決めていた。
(今の、ありのままの自分を踊ってみよう。今は自分に自信が持てないけど、いつかはこの暗い心の闇を抜け出してみたい。…あの、あこがれのいちごちゃんのようにはなれなくても、少しでも近づきたい!)

どんな風に手や足、目線から体全体までを動かしたら、人に分かってもらえるだろう。
…いや、人がどうというより、自分で自分の動きと心がシンクロできているか、納得できるだろう。
授業では練習の時間などなく、私も他の子たちと同じように、家に帰って自分の部屋でこっそり練習していた。

集中しているはずなのに、つい、とかすめる思いは、いつも同じ。
(いちごちゃんは、どんなダンスをするんだろう…?立っているだけでも絵になるくらい、綺麗な子…)
その都度、想像しようとしてもできないくらい、何だかドキドキしてしまった。
自分のダンスと同じくらいに。

そして、次の体育の時間、一人ひとりの創作ダンス発表会が始まった。