2010年12月1日水曜日

いちごボーイ(2)

いちごちゃんを遠くからでも見ていられるなら、電車での通学も私にとっては苦にならなかった。
本当はいつまでも布団の中にいたい性分の私が早起きするようになり、家族は驚いていた。
いや、一番驚いていたのは、私自身かもしれない。
こんなに、誰か1人に心を奪われてしまったことは、いままでなかったもの。

いちごちゃんは、ボーイッシュな見た目通り、体育の授業では何をやっても万能。
私はといえば、太めのもっさりした体が示す通り、何をやってもパッとしない。
かといって、見学を決め込む狡猾さもなく、まだ顔と名前の一致しないクラスメート達にクスクス笑われながら、レシーブを決められずにコートへ落としていたりした。
そんな時も、いちごちゃんは、私を笑うわけでもなく、無表情に近い態度。
(眼中にもない、ってことなのかな…)
そう自分で考えるのは悲しいけれど、やっぱり私にはそうとしか思えなかった。

あの、たった一時間のダンスの授業の時までは。