2012年6月5日火曜日

キス。(2)

しかしまあ、偶然というか、僥倖というか、来るときには来るもんである。

「えー、先日の代表委員会でぇ、各クラス単位でレクリエーションを行おうということになりましたぁ。お金は生徒会の予算の方からいくばくか出るってことなので、希望を取りたいと思いますー」
LHRで、代表委員の娘が発表するやいなや、クラス中が大歓声と笑顔だらけになった。

(チャ、チャンスかも…これって、早苗さんとお近づきになれる…)
るみかが一人もんもんとしている間に、次々とレクの案が出されていく。

「ボーリング!班対抗!」
「バレーボール!」
「お茶会!」
「しぶいよ~、それ~」
「じゃあ、王様カラオケ大会!」
「?何それ?」
「んーと、班でね、一番歌が上手い娘を対抗戦させて、得点トップだったら、何でも他の子は言うこと聞くのよ」
「うっわー、それマジやべくね?」
「でも何か、面白そうだよねえ」
「スポーツ得意な娘って目立つけどぉ、地味目な子にもチャンス、あるじゃん」

何だか、流れが決まってきそうだった。
密かに心の中で、るみかはガッツポーズを決める。
というのは、るみかのばーちゃんは民謡や演歌が大好きで、小さいときからるみかもよく歌わされてきたからだった。

(お、王様…なれるといいな…)

AKBやKARAが全盛の今時、はてさて、るみかは王様になれるかどうだろうか?
そして、念願のあの……を、成就させられるのだろうか?