オリンピックって、大好きです。
国連決議で、期間中は停戦協定が結ばれるんですって。
もー、永遠にオリンピックやって、世界中の人で仲良くお祭り騒ぎできたらいいのに!
時間と自分の都合との関係で、どーしても開会式は見られない部分がありました。
それがなんと、一番期待してた「007」のシーンです。
しかも、本物の女王様まで名演技をご披露されたという、
まさに「女王陛下の007」なワンシーン。
こういうシャレに乗ってくださるっていうのが、いかにもイギリスのウィットを感じさせて下さいますね。愉しい~。
あと、じーっと録画見てて気になったのが、
「あの国名しょって歩いてるおねーちゃん達、どういうしくみになってるのかしらん?」
という事です。
日本みたいな短い国名ならいいですけど、3行ぐらいあるのを見ると、重くないか?とドキドキしながら見てました。
日本の活躍も、もちろん見てて嬉しいですが、
家にいながら世界中のスーパーレベルを浴びるように拝めるなんて、幸せですねー。
と、いうことで、今日はこれまで。
2012年7月29日日曜日
2012年7月24日火曜日
「お集まり」(5)
蕗子さまは、和也お兄様のお妹御にあたられる、白宮家の末娘。
白宮家は男のご兄弟が多くて、しかもみな成人しておられるから、
女学校を卒業されてそう幾年もたたない蕗子さまが、なお嫋々として見える。
今日のお召し物は、柔らかな鶸(ひわ)色の、肩から裾にかけて四季の花々がふんわりと染め出された友禅。
おとなしい方だから、やわらかものがよくお似ましになる。
長い髪は結い流しにされ、後ろをお召し物と同じ布で結んでいらっしゃる。
「おすてきねえ…私になんか、あんなお洒落、一生できないわ…」
「何、比べてるのよ。当たり前じゃないの」
うっとり見とれる鹿乃子に、柚華子が悪態をつく。
「だって私、派手で幾何学的な柄の織りが大好きなんですもの。いかにも銘仙みたいな」
「そうねえ、あなたの性格からいくと、そうなるでしょうねえ」
「柚華子さまだって、いつも洋装でいらっしゃるでしょ? お通いの女学校もせえらあ襟のわんぴいすがご制服だそうだし…」
「だ、だってしょうがないじゃないの。蒼宮は皆、生まれた時から洋装ですもの!」
と、いつの間にか二人が言い合っていると、
「お静かに…」
と、母上より年上の大伯母様方から、ジロリ、と睨まれてしまった。
「ちょうど近日中に、蕗子が習っておりますピアノの御教室で、発表会がございまして。もういい年でございますし、一度は辞退申し上げたのですが、先生が是非にとお声をおかけくださいまして。
『お集まり』の席をお借りいたしまして、本人に少々、度胸付けをさせてやってくださいまし…」
白宮の御令室がお話される隣で、蕗子さまはうつむき気味で立っていらっしゃる。
楽譜は、お持ちでは無いみたい…暗譜でいらっしゃるのね。
どんな曲を弾かれるのかしら?
お静かな曲? お可愛らしい曲?
鹿乃子は、椅子の調節をされる蕗子様のご様子を、蒼宮家のすたいんうぇい製グランドピアノ越しにちらり、と見ながら予想した。
予想は、美しく外れた。
華やかで、迫力のある、情熱的な出だし。
(まあっ、ショパンの「英雄ポロネーズ」だわ !それを、お着物で弾かれるとは…!)
肩に余分な力を入れるでもなく、美しい姿勢を保ったまま、それでも鍵盤を叩く力強さは確かで。
サロン室全体に、「ほう…っ」と、誰からともなくため息が広がる。
そしてまた、その曲の後ろに隠れるように、ひそひそ話が流れて回る。
「蕗子さま、いよいよ近日中に、お決まりだった方とご婚礼をお挙げになるらしくてよ?」
「婚約(エンゲージ)なさってから、もう、経ちますものねえ」
「それで、独身時代の思い出に、今まで固辞していらした、ピアノの発表会もご出演を決められたとか」
「四神家の令嬢の中で、一番のおとなしやさんだと思っておりましたら、まあ…意外と。やはり、血は争えないものなのでしょうかね?」
奥様方のひそひそ話がちょうど一区切りした頃、蕗子さんのピアノが終わった。
おしゃべりばかりの御令室様方は、型通りの軽めの拍手で終わったが、蕗子さまより年下の令嬢たちは、すっかり興奮して、大きな拍手をしながら、まだピアノの椅子に座ったままの蕗子さまに駆け寄り、取り囲んだ。
「蕗子お姉様、なんておすごいんでしょう! もう私、心臓がドキドキしてしまいましてよ」
「弾いていない鹿乃子さまが、何でドキドキするのよ。…私はもうすっかり、聞き惚れてしまいましてよ」
「蕗子おねえちゃま!おすてき!私もあんな風に、弾いてみたあい」
「そうなの。梅子も桃子も、練習不足だって、いつもマダム・レイナに手を叩かれますのよ?」
そんな年下の…妹御のような…娘達のさえずりを、蕗子お姉様はふんわりとした笑顔で聞いてくださる。
(でも…なんだか、ちょっと、お寂しそう…?)
誰にも言わないけれど、鹿乃子は、ある童謡の一節を思い出した。
文金島田に 帯締めながら 花嫁御寮は なぜ泣くのだろ……。
まだ女学校一年の鹿乃子には、分からない。
分からないながらも、何となく、雰囲気というものは感じられる。
(今日の『お集まり』は、もしかすると、お家へ納まってしまわれる、蕗子お姉様のお別れの会だったのかもしれないわ…)
そこへ
「何、似合わずにぼんやりしてるのよ。お菓子を皆様に回すのくらい、手伝ってちょうだい!」
相変わらず、柚華子のキンキン声。
ふと見ると、からくり人形さんのような梅子と桃子も、かいがいしく働いている。
(私たちには、親族であったり、姉妹であったり、同じ年の少女が四神家の中にいるわ。でも…蕗子お姉様は、私たちが生まれるまでは、もしかしたら、ずっと一人で…それってどんなに、心さみしく、よるべなかったことでしょうね…)
鹿乃子が、ふっと思っていると、
「かーのーこーさん。聞こえてるの?!ちゃっちゃと手伝ってくださいな、ちゃっちゃと!」
珍しく、くだけた言葉遣いで、キンキンと柚華子が采配を振るう。
鹿乃子も、大急ぎで手伝いの輪に入りながら、
「ね、柚華子さん。私ね、あなたと同い年で、この四神家に生まれて、一緒に育つことができて、良かった、と思うわ。本当よ?」
と、ささやいた。
その途端、柚華子が持っていたくっきーの皿がすとーんと床に落ち、梅子と桃子が
「あらー」「きゃー」
と小声で叫びながら、片付けに走ってくる。
「かっ、鹿乃子さん…あっ、あなたねえ…こんな、忙しい時に、何を…」
さっきまでのキンキンはどこへやら、顔を真っ赤にして、柚華子は落ちたくっきーを拾う。
「だって、本当なんですもの。思ったら、すぐに口に出さないと、この気持ちが逃げてしまいそうで、私、すぐに言ってしまうんですの」
一緒にくっきーを拾いながら、同じ目線で向かい合い、鹿乃子は柚華子にニコッとほほえみかけた。
柚華子はというと、何も言わずにぷい、と横を向いたが、頬が真っ赤なのは変わらない。
そんなこんなで、始まる前は憂鬱だった『お集まり』も、柚華子がその後てんでおとなしくなってしまったり、とってもお久しぶりに蕗子お姉様とお話ができたり(和也お兄様のお話もしてくださったり!)存外、鹿乃子にとっては楽しく過ごすことができた。
御令室様方は、この後かくてるやおーどぶるをお召し上がりになるということで、一足お先に御令嬢方がお開きということになった。
まずは、お小さい玄宮家の梅子ちゃまと桃子ちゃまが、二人で一台の車に乗り込む。
「お姉ちゃまがた、お元気でー」
「お次の『お集まり』は、玄宮でいたしますー。お元気でー」
姿が見えなくなるまで、双方、互いに手を振る。
次は、お疲れの加減をお察しして、白宮家の蕗子お姉様。
鹿乃子と柚華子が深くお辞儀をすると、お姉様は、するすると後部座席の窓を開けさせた。
こんな事は初めてで、示し合わせたわけもなく、二人がそちらへ駆け寄ると、蕗子お姉様は、小さく、でも鈴を振るような可愛らしい声で
「柚華子さん、本日は本当に有難う存じます。愉しかったですわ。…それから、お二人とも」
「はっはい?!」
「まだ女学生の時代は始まったばかり、存分にお楽しみ遊ばせ。女はね、その後は…」
と、蕗子お姉様はしばらく言いよどんでいらしたが、
「きっと、次にお会いできるときは、もう少し上手にお話出来るように、考えておきますわ。それまでは、勉学も体操も、お友達と御仲良しになるのも、何でも存分にお楽しみ遊ばせ。ね?」
そうして、ふんわりとした微笑みを残して、白いお車で行ってしまわれた。
二人とも、しばらく車寄せのところで、並んで立っていた。
蕗子さまのお言葉が、何となく、思った以上に心の奥深くに沈んでいく気がして。
女学校をでて、花嫁修業をして、きっとその間に婚約(エンゲージ)が調い、結婚式を挙げて…。
年下とはいえ男子がいる蒼宮家はともかく、鹿乃子は一人娘だから、自分がどうやって朱宮家を存続させていかねばならないのか、まだわからない。
生来の気性と合わせて、馬の合う武道を鍛錬しているくらいしか、やっていないが。
馬…?
ひづめの音がパッカパッカとのんびり響いて来た。
乗っているのは、金モールのついた礼服を着こなした、若い近衛兵(ガーズ)。
「和也お兄様。よく、こちらの『お集まり』のお開きがおわかりになりましたね?」
鹿乃子は、和也を見ると、つい饒舌になってしまう。
「それくらいわからなくちゃあ、俺らの仕事は成り立たないよ。…蕗子は?」
お妹御を心配なさる様子は、軍人らしくなく、一人の優しい兄上に戻ってしまわれる。
「今さっき、お見送りをいたしましたわ」
「ふーん。じゃ、あとは、子鹿の所の片桐が車を持ってくるだけだな。…柚華子姫、今日だけでなく、支度から何から大変だったろう。母上と蕗子に代わって、礼を言う」
和也の突然の労いに、
「い、いえ、別に…」
と、柚華子は言葉少なだ。
(あれえ、別に柚華子さん、照れてる訳でもないみたいだし…どうしたんだろ?)
そこへ、朱宮のひときわ大きな外国車が、ゆったりと進んできた。
それを見やって、和也はニヤリと笑うと
「さ、これで御令嬢方の『お集まり』は本当のお開きか。…子鹿、また女学園からお前の面白い話が伝わってくるのを、ガーズの若い奴らが楽しみに待ってるぞ。せいぜいお転婆しろよ?」
「まあ、おひどい! そんな、わざとなんか、しませんよーだ」
鹿乃子は、お行儀悪く、和也にあっかんべをして見せた。
和也は白手袋で口を隠し、ぷぷっと笑って馬の歩を進めていった。
「ねえ、柚華子さんは、ガーズお好きでないの? 私は、馬が大好きなのだけど」
「馬は…匂いがいや。私は、どちらかと言ったら、海軍(ネーヴィー)がいいわ」
「まあ、意中のお方とか、いらっしゃるの?」
「本当に、鹿乃子さんたら、あけすけねえ。…ま、あなたの場合は、誰が見てもすぐ分かってしまうから、聞く必要もないけれど?」
「なーによう、それ?!」
待ちくたびれた片桐が、柔らかめに警笛を鳴らす。
「それでは、おいとまいたしますわ。おもてなし、有難う存じます、柚華子さま」
「こちらこそ、お楽しみいただければ幸いに存じます、鹿乃子さま」
型どおりの挨拶をして、その後、二人とも同時にプッと噴き出す。
車が門を出るまで、柚華子は車寄せに立っていてくれた。
「いかがでしたか? お嬢様」
運転しながら、片桐はさりげなく訊いてくれる。
「…そうね、まあ、いろいろあったけど、結局は『案ずるより産むが易し』という所かしら」
「それは、ようございました」
「ほんとうに。…片桐の事、予言者かと思ってよ。それも、かなり当たる」
「はっはっは…予言者とは、ようございましたな。…そうそう、予言者と言えば、名文家の春野は同乗していないようですが、どうしたのでしょうな?」
鹿乃子は、座席から飛び上がりそうに叫んだ。
「あっ!! 置いてきちゃった!!」
ひときわ闊達な、片桐の笑い声が車内に響く。
「よございますよ。奥様や旦那様をお迎えに上がる際にでも、拾ってまいりましょう」
「ありがとう、片桐。…それから、それからね、ひとつ、お願いなんだけど」
「はい?」
「この事…ガーズには、内緒にしてくれる?」
(おわり)
白宮家は男のご兄弟が多くて、しかもみな成人しておられるから、
女学校を卒業されてそう幾年もたたない蕗子さまが、なお嫋々として見える。
今日のお召し物は、柔らかな鶸(ひわ)色の、肩から裾にかけて四季の花々がふんわりと染め出された友禅。
おとなしい方だから、やわらかものがよくお似ましになる。
長い髪は結い流しにされ、後ろをお召し物と同じ布で結んでいらっしゃる。
「おすてきねえ…私になんか、あんなお洒落、一生できないわ…」
「何、比べてるのよ。当たり前じゃないの」
うっとり見とれる鹿乃子に、柚華子が悪態をつく。
「だって私、派手で幾何学的な柄の織りが大好きなんですもの。いかにも銘仙みたいな」
「そうねえ、あなたの性格からいくと、そうなるでしょうねえ」
「柚華子さまだって、いつも洋装でいらっしゃるでしょ? お通いの女学校もせえらあ襟のわんぴいすがご制服だそうだし…」
「だ、だってしょうがないじゃないの。蒼宮は皆、生まれた時から洋装ですもの!」
と、いつの間にか二人が言い合っていると、
「お静かに…」
と、母上より年上の大伯母様方から、ジロリ、と睨まれてしまった。
「ちょうど近日中に、蕗子が習っておりますピアノの御教室で、発表会がございまして。もういい年でございますし、一度は辞退申し上げたのですが、先生が是非にとお声をおかけくださいまして。
『お集まり』の席をお借りいたしまして、本人に少々、度胸付けをさせてやってくださいまし…」
白宮の御令室がお話される隣で、蕗子さまはうつむき気味で立っていらっしゃる。
楽譜は、お持ちでは無いみたい…暗譜でいらっしゃるのね。
どんな曲を弾かれるのかしら?
お静かな曲? お可愛らしい曲?
鹿乃子は、椅子の調節をされる蕗子様のご様子を、蒼宮家のすたいんうぇい製グランドピアノ越しにちらり、と見ながら予想した。
予想は、美しく外れた。
華やかで、迫力のある、情熱的な出だし。
(まあっ、ショパンの「英雄ポロネーズ」だわ !それを、お着物で弾かれるとは…!)
肩に余分な力を入れるでもなく、美しい姿勢を保ったまま、それでも鍵盤を叩く力強さは確かで。
サロン室全体に、「ほう…っ」と、誰からともなくため息が広がる。
そしてまた、その曲の後ろに隠れるように、ひそひそ話が流れて回る。
「蕗子さま、いよいよ近日中に、お決まりだった方とご婚礼をお挙げになるらしくてよ?」
「婚約(エンゲージ)なさってから、もう、経ちますものねえ」
「それで、独身時代の思い出に、今まで固辞していらした、ピアノの発表会もご出演を決められたとか」
「四神家の令嬢の中で、一番のおとなしやさんだと思っておりましたら、まあ…意外と。やはり、血は争えないものなのでしょうかね?」
奥様方のひそひそ話がちょうど一区切りした頃、蕗子さんのピアノが終わった。
おしゃべりばかりの御令室様方は、型通りの軽めの拍手で終わったが、蕗子さまより年下の令嬢たちは、すっかり興奮して、大きな拍手をしながら、まだピアノの椅子に座ったままの蕗子さまに駆け寄り、取り囲んだ。
「蕗子お姉様、なんておすごいんでしょう! もう私、心臓がドキドキしてしまいましてよ」
「弾いていない鹿乃子さまが、何でドキドキするのよ。…私はもうすっかり、聞き惚れてしまいましてよ」
「蕗子おねえちゃま!おすてき!私もあんな風に、弾いてみたあい」
「そうなの。梅子も桃子も、練習不足だって、いつもマダム・レイナに手を叩かれますのよ?」
そんな年下の…妹御のような…娘達のさえずりを、蕗子お姉様はふんわりとした笑顔で聞いてくださる。
(でも…なんだか、ちょっと、お寂しそう…?)
誰にも言わないけれど、鹿乃子は、ある童謡の一節を思い出した。
文金島田に 帯締めながら 花嫁御寮は なぜ泣くのだろ……。
まだ女学校一年の鹿乃子には、分からない。
分からないながらも、何となく、雰囲気というものは感じられる。
(今日の『お集まり』は、もしかすると、お家へ納まってしまわれる、蕗子お姉様のお別れの会だったのかもしれないわ…)
そこへ
「何、似合わずにぼんやりしてるのよ。お菓子を皆様に回すのくらい、手伝ってちょうだい!」
相変わらず、柚華子のキンキン声。
ふと見ると、からくり人形さんのような梅子と桃子も、かいがいしく働いている。
(私たちには、親族であったり、姉妹であったり、同じ年の少女が四神家の中にいるわ。でも…蕗子お姉様は、私たちが生まれるまでは、もしかしたら、ずっと一人で…それってどんなに、心さみしく、よるべなかったことでしょうね…)
鹿乃子が、ふっと思っていると、
「かーのーこーさん。聞こえてるの?!ちゃっちゃと手伝ってくださいな、ちゃっちゃと!」
珍しく、くだけた言葉遣いで、キンキンと柚華子が采配を振るう。
鹿乃子も、大急ぎで手伝いの輪に入りながら、
「ね、柚華子さん。私ね、あなたと同い年で、この四神家に生まれて、一緒に育つことができて、良かった、と思うわ。本当よ?」
と、ささやいた。
その途端、柚華子が持っていたくっきーの皿がすとーんと床に落ち、梅子と桃子が
「あらー」「きゃー」
と小声で叫びながら、片付けに走ってくる。
「かっ、鹿乃子さん…あっ、あなたねえ…こんな、忙しい時に、何を…」
さっきまでのキンキンはどこへやら、顔を真っ赤にして、柚華子は落ちたくっきーを拾う。
「だって、本当なんですもの。思ったら、すぐに口に出さないと、この気持ちが逃げてしまいそうで、私、すぐに言ってしまうんですの」
一緒にくっきーを拾いながら、同じ目線で向かい合い、鹿乃子は柚華子にニコッとほほえみかけた。
柚華子はというと、何も言わずにぷい、と横を向いたが、頬が真っ赤なのは変わらない。
そんなこんなで、始まる前は憂鬱だった『お集まり』も、柚華子がその後てんでおとなしくなってしまったり、とってもお久しぶりに蕗子お姉様とお話ができたり(和也お兄様のお話もしてくださったり!)存外、鹿乃子にとっては楽しく過ごすことができた。
御令室様方は、この後かくてるやおーどぶるをお召し上がりになるということで、一足お先に御令嬢方がお開きということになった。
まずは、お小さい玄宮家の梅子ちゃまと桃子ちゃまが、二人で一台の車に乗り込む。
「お姉ちゃまがた、お元気でー」
「お次の『お集まり』は、玄宮でいたしますー。お元気でー」
姿が見えなくなるまで、双方、互いに手を振る。
次は、お疲れの加減をお察しして、白宮家の蕗子お姉様。
鹿乃子と柚華子が深くお辞儀をすると、お姉様は、するすると後部座席の窓を開けさせた。
こんな事は初めてで、示し合わせたわけもなく、二人がそちらへ駆け寄ると、蕗子お姉様は、小さく、でも鈴を振るような可愛らしい声で
「柚華子さん、本日は本当に有難う存じます。愉しかったですわ。…それから、お二人とも」
「はっはい?!」
「まだ女学生の時代は始まったばかり、存分にお楽しみ遊ばせ。女はね、その後は…」
と、蕗子お姉様はしばらく言いよどんでいらしたが、
「きっと、次にお会いできるときは、もう少し上手にお話出来るように、考えておきますわ。それまでは、勉学も体操も、お友達と御仲良しになるのも、何でも存分にお楽しみ遊ばせ。ね?」
そうして、ふんわりとした微笑みを残して、白いお車で行ってしまわれた。
二人とも、しばらく車寄せのところで、並んで立っていた。
蕗子さまのお言葉が、何となく、思った以上に心の奥深くに沈んでいく気がして。
女学校をでて、花嫁修業をして、きっとその間に婚約(エンゲージ)が調い、結婚式を挙げて…。
年下とはいえ男子がいる蒼宮家はともかく、鹿乃子は一人娘だから、自分がどうやって朱宮家を存続させていかねばならないのか、まだわからない。
生来の気性と合わせて、馬の合う武道を鍛錬しているくらいしか、やっていないが。
馬…?
ひづめの音がパッカパッカとのんびり響いて来た。
乗っているのは、金モールのついた礼服を着こなした、若い近衛兵(ガーズ)。
「和也お兄様。よく、こちらの『お集まり』のお開きがおわかりになりましたね?」
鹿乃子は、和也を見ると、つい饒舌になってしまう。
「それくらいわからなくちゃあ、俺らの仕事は成り立たないよ。…蕗子は?」
お妹御を心配なさる様子は、軍人らしくなく、一人の優しい兄上に戻ってしまわれる。
「今さっき、お見送りをいたしましたわ」
「ふーん。じゃ、あとは、子鹿の所の片桐が車を持ってくるだけだな。…柚華子姫、今日だけでなく、支度から何から大変だったろう。母上と蕗子に代わって、礼を言う」
和也の突然の労いに、
「い、いえ、別に…」
と、柚華子は言葉少なだ。
(あれえ、別に柚華子さん、照れてる訳でもないみたいだし…どうしたんだろ?)
そこへ、朱宮のひときわ大きな外国車が、ゆったりと進んできた。
それを見やって、和也はニヤリと笑うと
「さ、これで御令嬢方の『お集まり』は本当のお開きか。…子鹿、また女学園からお前の面白い話が伝わってくるのを、ガーズの若い奴らが楽しみに待ってるぞ。せいぜいお転婆しろよ?」
「まあ、おひどい! そんな、わざとなんか、しませんよーだ」
鹿乃子は、お行儀悪く、和也にあっかんべをして見せた。
和也は白手袋で口を隠し、ぷぷっと笑って馬の歩を進めていった。
「ねえ、柚華子さんは、ガーズお好きでないの? 私は、馬が大好きなのだけど」
「馬は…匂いがいや。私は、どちらかと言ったら、海軍(ネーヴィー)がいいわ」
「まあ、意中のお方とか、いらっしゃるの?」
「本当に、鹿乃子さんたら、あけすけねえ。…ま、あなたの場合は、誰が見てもすぐ分かってしまうから、聞く必要もないけれど?」
「なーによう、それ?!」
待ちくたびれた片桐が、柔らかめに警笛を鳴らす。
「それでは、おいとまいたしますわ。おもてなし、有難う存じます、柚華子さま」
「こちらこそ、お楽しみいただければ幸いに存じます、鹿乃子さま」
型どおりの挨拶をして、その後、二人とも同時にプッと噴き出す。
車が門を出るまで、柚華子は車寄せに立っていてくれた。
「いかがでしたか? お嬢様」
運転しながら、片桐はさりげなく訊いてくれる。
「…そうね、まあ、いろいろあったけど、結局は『案ずるより産むが易し』という所かしら」
「それは、ようございました」
「ほんとうに。…片桐の事、予言者かと思ってよ。それも、かなり当たる」
「はっはっは…予言者とは、ようございましたな。…そうそう、予言者と言えば、名文家の春野は同乗していないようですが、どうしたのでしょうな?」
鹿乃子は、座席から飛び上がりそうに叫んだ。
「あっ!! 置いてきちゃった!!」
ひときわ闊達な、片桐の笑い声が車内に響く。
「よございますよ。奥様や旦那様をお迎えに上がる際にでも、拾ってまいりましょう」
「ありがとう、片桐。…それから、それからね、ひとつ、お願いなんだけど」
「はい?」
「この事…ガーズには、内緒にしてくれる?」
(おわり)
2012年7月21日土曜日
「コミック百合姫」9月号読んだ!
やっと今日、買ってきました~。
やっぱり、狙ってた二つの作品は、期待以上の展開でした。うふー。
あと、なもりさんの表紙~!
初めて四人が揃ったら、こう来ましたか!
どうなるんだ~、今年はあと一号(または1月号入れれば二号)だぞ~~!!
あと、レジで「え?!」思ったのは、いつもと同じ厚さで、いつもの半額!
このご時世に、半額っすよ。
コミックス価格であんだけバラエティに富んだ内容って、すごい。
と、以後、ちょっと辛口気味に感想書きますので、そういうのを見たくない方は、ここでパスなさって下さいね。
…
…
…
…
…
…よござんすか?
今号は、正直申しますと、作品の数々のレベルにすごく二極化を感じてしまいました。
あくまでも私見ですよ。
異議を唱える方もいらっしゃるでしょう。
…なんというか、「一読して内容を覚えてしまえる、面白い作品」と、そうでないのとにぱっきり分かれてしまったと申しますか。
または、同じマンネリでも「安心して待って読める、いいマンネリ」と「もしかして、古くなって来つつありはしないか?的マンネリ」に区分されてしまうと申しますか。
それがまた、私の作者さんの好みと一致していない所も、驚きでした。
いつも真っ先に読んでいた方々のお話が、記憶に残らなかった哀しさ。
逆に、この作家さん、今まで食わず嫌いしてたのかな、と思うような面白さ。
そんなのを感じた、9月号でありました。
しかし思うに、百合姫の屋台骨は、現在の所、ゆるゆりと百合男子かなあ。
この二つがなくなったら、今の百合姫は百合姫たり得なくなるくらい、いい意味で落ち着きと実験的という個性を両立させている作品だと、私は思います~。
ではでは、このへんで。
やっぱり、狙ってた二つの作品は、期待以上の展開でした。うふー。
あと、なもりさんの表紙~!
初めて四人が揃ったら、こう来ましたか!
どうなるんだ~、今年はあと一号(または1月号入れれば二号)だぞ~~!!
あと、レジで「え?!」思ったのは、いつもと同じ厚さで、いつもの半額!
このご時世に、半額っすよ。
コミックス価格であんだけバラエティに富んだ内容って、すごい。
と、以後、ちょっと辛口気味に感想書きますので、そういうのを見たくない方は、ここでパスなさって下さいね。
…
…
…
…
…
…よござんすか?
今号は、正直申しますと、作品の数々のレベルにすごく二極化を感じてしまいました。
あくまでも私見ですよ。
異議を唱える方もいらっしゃるでしょう。
…なんというか、「一読して内容を覚えてしまえる、面白い作品」と、そうでないのとにぱっきり分かれてしまったと申しますか。
または、同じマンネリでも「安心して待って読める、いいマンネリ」と「もしかして、古くなって来つつありはしないか?的マンネリ」に区分されてしまうと申しますか。
それがまた、私の作者さんの好みと一致していない所も、驚きでした。
いつも真っ先に読んでいた方々のお話が、記憶に残らなかった哀しさ。
逆に、この作家さん、今まで食わず嫌いしてたのかな、と思うような面白さ。
そんなのを感じた、9月号でありました。
しかし思うに、百合姫の屋台骨は、現在の所、ゆるゆりと百合男子かなあ。
この二つがなくなったら、今の百合姫は百合姫たり得なくなるくらい、いい意味で落ち着きと実験的という個性を両立させている作品だと、私は思います~。
ではでは、このへんで。
2012年7月20日金曜日
追記・その3
大韓民国の方もいらしてる~。嬉しいな。
私、『景福宮』という漫画が大好きなんですよ~。
日本では『宮 くん ~ラブ・イン・キョンボックン』という名前がついてました。
さてさて、蒼宮家に行って困っていそうな鹿乃子ちゃんも書きたいし、
コミック百合姫の感想も書きたいところなのですが、
夏も(コミケも行けないのに~)なんか忙しくなりそうで、まだ百合姫が買えてない~(泣)
明日買えないと、マジ困ります。
車のガソリンも入れないとエンストしそーな状況ですが、百合エネルギーも枯渇しかけてます~!
あしたは補充日といきたい…いや、いかねばなるまい! です。
そうして、どちらかについて、このブログに書こうと考えておりますっ。
私、『景福宮』という漫画が大好きなんですよ~。
日本では『宮 くん ~ラブ・イン・キョンボックン』という名前がついてました。
さてさて、蒼宮家に行って困っていそうな鹿乃子ちゃんも書きたいし、
コミック百合姫の感想も書きたいところなのですが、
夏も(コミケも行けないのに~)なんか忙しくなりそうで、まだ百合姫が買えてない~(泣)
明日買えないと、マジ困ります。
車のガソリンも入れないとエンストしそーな状況ですが、百合エネルギーも枯渇しかけてます~!
あしたは補充日といきたい…いや、いかねばなるまい! です。
そうして、どちらかについて、このブログに書こうと考えておりますっ。
2012年7月15日日曜日
「お集まり」(4)
「すみません、柚華子さま。ちょっと、お玄関先で取り紛れておりまして…」
鹿乃子の言葉を遮るように、
「言い訳は結構。もう皆様お揃いでいらっしゃいましてよ。さっさといらして下さる?」
つん、ときびすを返すと、柚華子は足首ほどの丈のドレスを翻して、サロン室へと向かった。
住まいと同じく、蒼宮家の人々は洋装を好む。
追いかけながら、鹿乃子はつい
「柚華子さま、今日はご家名と同じく蒼のどれすでいらっしゃるのですね。とても、白いお肌に映えて、お似ましでいらっしゃいますわ」
と、思ったままため息混じりで話しかけていた。
「…そ、そんな事を言って、機嫌を取ろうとでも思っているのなら、大間違いよ!」
後ろ向きなので鹿乃子には見えないが、うっすらと頬を染めながら、柚華子は返した。
「機嫌だなんて、そんな…」
そこまでで会話は途切れ、脂粉の香りでむせかえるようなサロン室が、二人を出迎える。
「まあまあ、やっと鹿乃子さんお着きよ。あっちで引っかかり、こっちで引っかかり…相変わらず、あなたって四神家のお転婆さんねえ」
「いつもは迎えになぞ出ない、柚華子さんを部屋の外まで行かせるなんて、ねえ」
ほほほほ、と、楽しいのか馬鹿にしているのか分からない笑い声が、降ってくる。
この笑い声も、鹿乃子が「お集まり」を毛嫌いしている理由の一つである。
「さあさあ、皆様お静まりなさいませ。本日の「お集まり」には、白宮 蕗子さまがお久しゅうにおいでになりましてよ?」
誰かが扇をパンパン、と叩き、そう告げると、サロン室は一斉にどよめいた。
もちろん、鹿乃子と柚華子もだ。
「柚華子さんが、お呼びになったの?だとしたら、大した腕こきでいらっしゃるわね」
「そんなわけ、ないじゃないの!だとしたら、こんなに驚いてると思う?」
「これこれ、女学校の一年生さん方。仲良くおしゃべりなぞしていてはいけませんわよ。」
その声に、二人して
「仲良くなんか、ございません!!」
そう、鹿乃子にとって「お集まり」が嫌な理由の大きな一つは、同じ年の柚華子が、何かしらに付け張り合ったり絡んできたりすること、それがうっとうしくて仕方ないからなのである。
柚華子にとっても、そうなのかどうなのか、それは言葉だけでは分からない事だけれど。
(つづく)
鹿乃子の言葉を遮るように、
「言い訳は結構。もう皆様お揃いでいらっしゃいましてよ。さっさといらして下さる?」
つん、ときびすを返すと、柚華子は足首ほどの丈のドレスを翻して、サロン室へと向かった。
住まいと同じく、蒼宮家の人々は洋装を好む。
追いかけながら、鹿乃子はつい
「柚華子さま、今日はご家名と同じく蒼のどれすでいらっしゃるのですね。とても、白いお肌に映えて、お似ましでいらっしゃいますわ」
と、思ったままため息混じりで話しかけていた。
「…そ、そんな事を言って、機嫌を取ろうとでも思っているのなら、大間違いよ!」
後ろ向きなので鹿乃子には見えないが、うっすらと頬を染めながら、柚華子は返した。
「機嫌だなんて、そんな…」
そこまでで会話は途切れ、脂粉の香りでむせかえるようなサロン室が、二人を出迎える。
「まあまあ、やっと鹿乃子さんお着きよ。あっちで引っかかり、こっちで引っかかり…相変わらず、あなたって四神家のお転婆さんねえ」
「いつもは迎えになぞ出ない、柚華子さんを部屋の外まで行かせるなんて、ねえ」
ほほほほ、と、楽しいのか馬鹿にしているのか分からない笑い声が、降ってくる。
この笑い声も、鹿乃子が「お集まり」を毛嫌いしている理由の一つである。
「さあさあ、皆様お静まりなさいませ。本日の「お集まり」には、白宮 蕗子さまがお久しゅうにおいでになりましてよ?」
誰かが扇をパンパン、と叩き、そう告げると、サロン室は一斉にどよめいた。
もちろん、鹿乃子と柚華子もだ。
「柚華子さんが、お呼びになったの?だとしたら、大した腕こきでいらっしゃるわね」
「そんなわけ、ないじゃないの!だとしたら、こんなに驚いてると思う?」
「これこれ、女学校の一年生さん方。仲良くおしゃべりなぞしていてはいけませんわよ。」
その声に、二人して
「仲良くなんか、ございません!!」
そう、鹿乃子にとって「お集まり」が嫌な理由の大きな一つは、同じ年の柚華子が、何かしらに付け張り合ったり絡んできたりすること、それがうっとうしくて仕方ないからなのである。
柚華子にとっても、そうなのかどうなのか、それは言葉だけでは分からない事だけれど。
(つづく)
あしたは「コミック百合姫」9月号発売~
2ヶ月待たされて、もー、じれったいじれったい。
早く明日にならないかしら。
歩いて、近くの本屋へ買いに行くよー。
(西日本の方々は、それどころじゃありませんよね…ごめんなさい)
今回の楽しみは「ロケット☆ガール」がどう展開していくか。
あとは「サーク・アラクニ」も絵が綺麗で、ロッテがどう変わってゆくのか、楽しみ。
もうね、このために今、仕事ガンガン行ってますからねー。
買ってもすぐには読めないかと思うけど、でも、買います~!
早く明日にならないかしら。
歩いて、近くの本屋へ買いに行くよー。
(西日本の方々は、それどころじゃありませんよね…ごめんなさい)
今回の楽しみは「ロケット☆ガール」がどう展開していくか。
あとは「サーク・アラクニ」も絵が綺麗で、ロッテがどう変わってゆくのか、楽しみ。
もうね、このために今、仕事ガンガン行ってますからねー。
買ってもすぐには読めないかと思うけど、でも、買います~!
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