2012年7月20日金曜日

追記・その3

大韓民国の方もいらしてる~。嬉しいな。
私、『景福宮』という漫画が大好きなんですよ~。
日本では『宮 くん ~ラブ・イン・キョンボックン』という名前がついてました。

さてさて、蒼宮家に行って困っていそうな鹿乃子ちゃんも書きたいし、
コミック百合姫の感想も書きたいところなのですが、
夏も(コミケも行けないのに~)なんか忙しくなりそうで、まだ百合姫が買えてない~(泣)

明日買えないと、マジ困ります。
車のガソリンも入れないとエンストしそーな状況ですが、百合エネルギーも枯渇しかけてます~!
あしたは補充日といきたい…いや、いかねばなるまい! です。
そうして、どちらかについて、このブログに書こうと考えておりますっ。

2012年7月15日日曜日

「お集まり」(4)

「すみません、柚華子さま。ちょっと、お玄関先で取り紛れておりまして…」
鹿乃子の言葉を遮るように、
「言い訳は結構。もう皆様お揃いでいらっしゃいましてよ。さっさといらして下さる?」
つん、ときびすを返すと、柚華子は足首ほどの丈のドレスを翻して、サロン室へと向かった。

住まいと同じく、蒼宮家の人々は洋装を好む。
追いかけながら、鹿乃子はつい
「柚華子さま、今日はご家名と同じく蒼のどれすでいらっしゃるのですね。とても、白いお肌に映えて、お似ましでいらっしゃいますわ」
と、思ったままため息混じりで話しかけていた。

「…そ、そんな事を言って、機嫌を取ろうとでも思っているのなら、大間違いよ!」
後ろ向きなので鹿乃子には見えないが、うっすらと頬を染めながら、柚華子は返した。
「機嫌だなんて、そんな…」

そこまでで会話は途切れ、脂粉の香りでむせかえるようなサロン室が、二人を出迎える。
「まあまあ、やっと鹿乃子さんお着きよ。あっちで引っかかり、こっちで引っかかり…相変わらず、あなたって四神家のお転婆さんねえ」
「いつもは迎えになぞ出ない、柚華子さんを部屋の外まで行かせるなんて、ねえ」
ほほほほ、と、楽しいのか馬鹿にしているのか分からない笑い声が、降ってくる。
この笑い声も、鹿乃子が「お集まり」を毛嫌いしている理由の一つである。

「さあさあ、皆様お静まりなさいませ。本日の「お集まり」には、白宮 蕗子さまがお久しゅうにおいでになりましてよ?」
誰かが扇をパンパン、と叩き、そう告げると、サロン室は一斉にどよめいた。
もちろん、鹿乃子と柚華子もだ。

「柚華子さんが、お呼びになったの?だとしたら、大した腕こきでいらっしゃるわね」
「そんなわけ、ないじゃないの!だとしたら、こんなに驚いてると思う?」

「これこれ、女学校の一年生さん方。仲良くおしゃべりなぞしていてはいけませんわよ。」

その声に、二人して
「仲良くなんか、ございません!!」

そう、鹿乃子にとって「お集まり」が嫌な理由の大きな一つは、同じ年の柚華子が、何かしらに付け張り合ったり絡んできたりすること、それがうっとうしくて仕方ないからなのである。

柚華子にとっても、そうなのかどうなのか、それは言葉だけでは分からない事だけれど。

(つづく)

あしたは「コミック百合姫」9月号発売~

2ヶ月待たされて、もー、じれったいじれったい。
早く明日にならないかしら。
歩いて、近くの本屋へ買いに行くよー。
(西日本の方々は、それどころじゃありませんよね…ごめんなさい)

今回の楽しみは「ロケット☆ガール」がどう展開していくか。
あとは「サーク・アラクニ」も絵が綺麗で、ロッテがどう変わってゆくのか、楽しみ。

もうね、このために今、仕事ガンガン行ってますからねー。
買ってもすぐには読めないかと思うけど、でも、買います~!

2012年7月11日水曜日

「お集まり」(3)

革の座席を滑り降りるようにして、鹿乃子は片桐が開けてくれたドアを抜けた。
「有難う、片桐。今日もまた、行ってくるわね」
「世の中は捨てたものではございませんよ、お嬢様。きっとよろしいこともお待ちでしょう」
車中の会話を聞くともなく聞いていた初老の紳士は、自らの仕える令嬢にそう囁くと、目配せをした。
「…そうね。そんなものよね」
つられて鹿乃子も、にこりと微笑む。

蒼宮家は、四神家には珍しい、洋館である。
車寄せから、出迎えの使用人達に鹿乃子が挨拶を返そうとすると、
「こら、子鹿。相変わらず、ちびちゃいままだな?」
後ろの高いところから、親しげな成年の声が聞こえ、同時に鹿乃子の切り下げ髪がくしゃくしゃっと大きな手で撫でられる。

「和也お兄様!」
ぱあっと鹿乃子の顔は晴れやかに変わり、早くその姿を見たくて、くるりと振り向く。
近衛師団(ガーズ)のきららかな礼服に身を包んではいても、昔通りの悪戯っぽく優しい瞳。
そして…鹿乃子だけの内緒なのだけれど…四神家の中で、一番、大好きな方。

「お兄様、ごきげんよう。こんな所にいらしててよろしいの? 他の殿方は?」
「なに、俺もいま着いたばかりさ。年かさの中にいても窮屈だしな。それにしても…」
そこで和也は言葉を止め、高い背をかがめて鹿乃子の顔をしげしげと眺めながら、ニヤニヤ。
「女学園でも、早速、やらかしたんだって? お前の武勇伝が、ガーズでも噂に上ってるぞ」

「えーっ!!」
そんなことは想像だにしていなくて、鹿乃子は思わず赤くなった頬を両手で隠した。

「いいじゃないか。皆、悪いとは言っていないのだから。さすがは朱宮のお転婆娘って、株が上がってるぜ」
「いやです、そんなの! 株なんて上がってません!」
「そうかなあ。少なくとも俺は、そうやって筋を通せる子鹿は偉いと思ってるんだけど?」
「んもう…かまわないで下さい、お兄様ったら!」

鹿乃子しか子宝に恵まれなかった朱宮家では、養子をとるしか家を存続する術がない。
現代と違い、養子や結婚など戸籍に関する事柄については、本人の意志に関係なく、家同士の相談…時には一族の会議…で、決められることとなっていた。

和也の一族となる白宮では男の兄弟が多く、四神家の間では、密かにまだ二人が幼いときより、彼の朱宮家への養子縁組と、鹿乃子との婚約(エンゲージ)の約束が家同士で決められていた。

もちろん、鹿乃子にはまだ、一言も知らされていないが。
(すでに成年となった和也には伝えられているのかどうか…それは、賢明なる読者の皆様のご想像にお任せすることといたしましょう)

そんなじゃれ合いの後、鹿乃子は和也と別れ、改めて蒼宮家の使用人達に労いの言葉を掛けながら、いつも「お集まり」で使われる、婦人用のサロン室へと向かった。
すると、毛足の長いペルシア絨毯を敷き詰めた廊下の向こうから
「あっ、いらした! 鹿乃子お姉ちゃまあ!」
「本当だわ! 鹿乃子お姉ちゃまあ!」
玄宮家のひとつ年下の双子、梅子ちゃまと桃子ちゃまが、お揃いの着物姿で走ってきた。
二人とも、明るいローズの市松模様の錦紗に、大柄な黄色いチューリップが染められた、元気な柄ゆき。帯はそれぞれの名前にちなんだ花が、丸帯に豪奢に刺繍されているもの。

「ごめんなさいね、ちょっと玄関で話し込んでしまって」
「見てまーした。和也お兄ちゃまでしょう?」
「お姉ちゃまとお兄ちゃま、ちっちゃなときからケンカばっかりなさってらしたもーん」
うふうふ、と、両手にぶらさがってくる双子の相手をしながら、
(え。…そうか、他の方には、あれ、ケンカに見えるのかしらん…)
と、鹿乃子は思った。

その時。

「鹿乃子さま。ご到着あそばしてから、ずいぶんこちらへのご挨拶が遅くはなくて?」
キンキン響く声が、鹿乃子を現実の「お集まり」嫌いへ引き戻す。

(さあ…来たわよ。これから数時間、お家のために、耐えなくっちゃあ…)

キンキン声の主は、四神家の令嬢でただ一人、鹿乃子とおない年の女学校一年生。
本日の「お集まり」で御令嬢方を取り仕切る、蒼宮 柚華子(あおいのみや ゆかこ)である。

(つづく)

2012年7月10日火曜日

「お集まり」(2)

「朱宮(あけのみや)、蒼宮(あおいのみや)、玄宮(くろのみや)、白宮(しらのみや)…か。はああ…」
片桐が白手袋に制服姿で運転する、黒の外国車。
総革張りの後部座席にゆったりと座りながらも、鹿乃子はまだ往生際が悪かった。

「先程から、何をそうぶつぶつとおっしゃってるんですか、お嬢様? 本日は、折角の『お集まり』ではございませんか」
片桐の他に、ただ一人この車に乗ることを許されている使用人、鹿乃子付きの侍女頭、春野が不審そうに尋ねる。

鹿乃子が朱宮家に産声を上げたときからの侍女なればこそ、春野は他の侍女より遠慮もなく、鹿乃子の変化にも気づきやすい、なかなか油断ならない存在であるのだった。…裏返せば、これ以上頼りになる使用人はいない、という事なのだが。

「ねえ、春野」
「何でございますか、お嬢様?」
「あなたは、『お集まり』の、いったいどこがいいの?」
鹿乃子は、かなり本気で訊いた。

「まあ! たくさんございますわ。何から申し上げたらよろしいでしょう…近衛師団(ガーズ)の殿方の凛々しさ、御令室様方の贅を凝らしたお美しさ、ご子息様方はお健やかでご利発、お嬢様方は可憐で香り立つような花が今や咲かんとする風情。それから、実は、私ども下男や侍女ども、使用人同士が旧交をあたためさせていただく、数少ない機会でもございまして…」

うっとりと中空を見上げて夢物語のように語る、春野。
いいなあ、と、鹿乃子は思う。
こんな風に自分も考えられたら、「お集まり」がきっと楽しく感じられるのだろうに。

「春野…あなた、なかなかの名文家ね…。今度、どこかの婦人雑誌の懸賞小説に、何か書いて出してご覧なさい。いい線いくと思うわ、本当よ」

そう侍女頭へ感想を述べてから、何か少しでもいいところはないかしら、と、鹿乃子は考えた。

(近衛師団なら、大好きな叔父様方や、成年になられてめったにお話できなくなったけど、一番気心の知れた和也お兄様がいらっしゃるのよね…。
それに、金モールの着いた師団の軍服、手入れの行き届いて可愛らしい馬たち。
…きょう一日、ずっと近衛師団のお部屋にいられたらいいのだけど…、きっと、大事な大事なお話の邪魔だって、放り出されてしまうわね)

その次にいいことはないか、考えてみる。

(成年前のお兄様たちとは別席だから、これは論外ね。
となると、やっぱり…女子供の「お集まり」へ入るしかないわねえ。

玄宮のお家の、一つ年下の双子ちゃん。梅子ちゃまと桃子ちゃまなら、大丈夫。なついてくださってるし、お二人とも明るくて茶目さんで、とても可愛らしいし。

後は…ずっとお姉様になるけれど、もう女学校をご卒業された、白宮家の蕗子さま。あの方は物静かでいらして、ほとんどお声もうかがったことはないけれど、いつもほんのりと笑顔でいらして。
確か、今はお裁縫やお茶にお花、花嫁様になるためのご修養をお積みだとか…。)

さて。
ここで、鹿乃子の思考は、ぴたっと止まった。
同時に、片桐の踏むブレーキも、計ったようにぴたり、と止まる。

着いたのだ。
今回の「お集まり」の場所となる、蒼宮家に。

そして、この家にこそ、まさに鹿乃子の憂鬱の種となる御令嬢がお住まいなのであった。

(つづく)

2012年7月8日日曜日

追記・その2

ウクライナでたくさんご覧くださってる方がいらっしゃるんですね!
お国の名前を今まで挙げずに、すみませんでした。
ありがとうございます!

「お集まり」(1)

その日は晴天なのに、鹿乃子の心はどんより。
せっかく侍女が二人がかりで着付けた、紅地に御所解を大柄にあしらった錦紗(きんしゃ)の振り袖も、金糸交じりの麻の葉模様の丸帯も、この気分を浮き立たせてはくれない。

「はああ、またこの日が来ちゃったのね…。滅入るわ」

つい、鹿乃子がため息混じりに呟くと、年かさの方の侍女に咎められた。
「んま、お嬢様! そのようなお言葉、御前様や奥方様のお耳に入りましたら、大変な事になりましてよ!」
「だって…窮屈でたまらないんですもの。この日は。女学園に通っている毎日の方が、ずーっと、好き」
「それは、本日がまたとない特別のお日でいらっしゃるのですから、仕方ありません」

侍女のお説教に答えるように、もう一度、鹿乃子は小さくため息。
「全く…何度行っても慣れないわ。『お集まり』って」

『お集まり』とは、「四神家」…直宮家を御護りする役割を代々受け継いできた、朱雀・青龍・玄武・白虎の四家の面々が、年に数回集まる日のことである。
もちろん、直接に近衛師団(ガーズ)の中心を担う成年男子は、軍部の他でももっと頻繁に会い、「四神会」と称して、酒を酌み交わしながら国内外の情報交換を欠かさぬのであるが。

女、そして子供にとっての『お集まり』は、いささか違った意味合いを帯びてくる。
未成年の男子は質実剛健、文武両道、中には洒脱さを競い合う。

奥方…いや、御令室様方というべきか…や、御令嬢の皆々様には、その日の御拵えから始まり、お茶を嗜みながらの日仏語での華麗なる会話の応酬、女学校に通う年頃ともなれば、勉学や運動の成績比べも加わって。

(うー、嫌だわ。私、ああいう上っ面の社交って、大っ嫌いよ。いつぞや榎本様がおっしゃっていた通り、近衛師団の制服をまとって栗毛の馬で駆けている方が、どれだけ気持ちいいだろうかしら!)

さすがに、鹿乃子もこれ以上侍女を嘆かせたくはないので、この台詞は心の中だけに留めた。

「お嬢様、お支度は調い遊ばしましたか。車寄せに、運転手の片桐がお待ち申し上げております」
別の侍女が、鹿乃子の支度部屋のドア越しに、声を掛けた。
「有難う、今まいります。あなた方も、朝早くから綺麗に着付けてくれて、有難う」

位の貴き家の人間ほど、その家に仕える者たちの労をねぎらい、大切に接するように…。

四神家すべてに、代々伝わる家訓のひとつである。

何度聞いても、仕える者にとって当主家の方々のこのねぎらいは嬉しく、とりわけ鹿乃子の態度は情があり、また女学生になっても愛くるしいままだと、使用人たちは彼女を幼い頃から敬愛してきた。
(つづく)